amahikasです。
Cayin社のイヤホンをレビューする日が来るとは思いませんでした。(笑)
Cayinがイヤホンを開発しているという噂を聞いたときは驚きましたが、意外と早く出てきたことにも驚きました。
今回も代理店のコペックジャパン様にYB04をお借りしてじっくりと試聴をしました。
Cayin YB04について
YB04はCayin社にとって初めてのイヤホン(IEM)となります。バランスド・アーマチュア・ドライバを4つ搭載した3Way4Driverモデルで、Highに一基(Knowles)、Midに二基(Sonion & Knowles)、Lowに一基(Sonion)という構成になっています。ハウジングはアルミ製です。本体はそれなりに大きくて見た目も重厚感がありますが思いのほか軽いのはアルミ製だからなんですね。
コネクタは2Pinです。標準ケーブルは8芯となっていて銅と銀素材のハイブリッド仕様になっています。
8月16日(金)に発売をしたばかりで価格は5万円強です。
詳細については公式サイトを参考にしてくださいませ。
試聴環境
試聴にはメインで使っているDAP(デジタルオーディオプレーヤー)のCayin i5 DAPとiBasso DX220、OPUS #3を主に使いました。どちらも3.5mm端子に接続しています。再生アプリは3製品ともにNeutron Music Playerを使っていて設置値も合わせています。
DX220とOPUS #3の設定はHigh Gain、Cayin i5はLow Gainです。イコライザ類はすべて無効にしてあります。
試聴に使う音源はいつもと同じ曲です。
主にCDから取り込んだAppleロスレス(ALAC)で、試聴に使う曲や聴きどころについてはこちらを参考にしてくださいませ。
試聴結果
それではそれぞれの曲での印象を書いていきます。
Bisso Baba / Bob James
滑らかで細かい高域が好印象です。シンバル類の鳴り方が非常に良いですし、ピアノも高域から低域にかけて気持ちのいい鳴り方をします。低域についてはやや沈み込みが足りなくて量感も控えめです。ただよほどの低音好きでなければ満足できるレベルではないかと思います。それよりもキレやスピード感があって個人的には好きです。低音が不自然に膨らんだりボワつくことはありません。中域は過不足がなく、曲をよく支えてるという印象を受けます。最近はBA(バランスド・アーマチュア)のみの製品を聴くとLow Mid(低い中域)の量感が物足りなくて迫力が不足するということが多いのですが、YB04はギリギリの量感だと思います。
Rio Rush / Fourplay
シンバル音が少し軽めですが許容範囲です。むしろカラッとした音に仕上がっていて曲の軽快さが引き立ちます。この曲で聴くと深い低域もそこそこ出ていると感じます。さらに空間を包み込むような低い低音とリズムを刻む高い低音の差もわかりやすいです。
全体的に落ち着いた鳴らし方をするのも好印象です。カラッとした乾いた音像で大きく目立つ帯域はありません。フラットに近いバランスです。
Flesh and The Power It Holds / Death
音の密度が上がって情報量が増えてもごちゃついたり特定の帯域が聞こえづらくなるようなことがなく高いレベルで鳴らしています。この曲が持つスピード感と迫力も十分に表現していて、個人的に特に魅力を感じるのはギターの音です。ソロのヒステリックな音もうまく表現できてますが、ギターリフの歪みや乾いた感じの表現力が高いです。
Master of Puppets / Metallica
ギターリフの鳴り方が気持ちいいです。もたつくことがなくサクサクといいリズムで鳴ってくれます。スネアのアタック音も強すぎず弱すぎずで良いバランスです。さすがに音源の粗さまではカバーしてくれませんが、そこは音源に素直な製品という印象です。非常にニュートラルで誇張のない音を出しますね。
At The End Of The Day / Les Miserables
前の曲に比べると音場がパーッと広がりました。音場についても無理に音を伸ばして空間を広げることはなく音源に対して素直と感じます。冒頭のパーカッションと歓声も細かく聴きとることができますし、パーカッションの音の滑らかさが好印象ですね。コーラス部分は女性と男性の声もよく聞き分けられます。低い弦楽器もしっかりと鳴ってますしレンジもそれなりに広いですね。
各楽器の音が聞き分けやすく鳴ってるだけではなく、正確に鳴ってるとも感じました。これは変に誇張をしていないからだと思います。
Crush / Kelly Sweet
この曲では音源通りに女性ボーカルが前に出てきます。バックで流れるアコギの音も適度に奥まっていますが、埋もれることなく存在感があるのもいいですね。ベース音はもう少し量感が出てもいいかなと思いますが、量感よりも質が良いのであまり気になりません。タイトでいいです。
Rock the Blues Away / AC/DC
Cayin i5で聴いても中域の量感は十分です。迫力がすごくあるかというとそうではないのですが、曲の雰囲気を壊すことはありません。DX220で聴くと良い具合に中域を低域が補正されます。以外とOPUS #3がもっとも良いバランスで鳴ったりします。
この曲はCayin i5とOPUS #3だともしかすると中域が不足するかなと思っていたんですが、結果的に問題ありませんでした。
割と最近の曲なのでAC/DCの過去作品と比べると音圧が高くて音も近めです。しかし、YB04は基本的に奥行きのある鳴らし方をするので全体的に音が近いとは感じません。
The Brain Dance / Animal as Leaders
AC/DCに比べると音場が広がります。アンビエントな雰囲気がよく表現されているのと各楽器の分離も良いです。分析的に聴くのにも使えますが極端に分析的な音ではなく、音楽を楽しむのにも適してると思います。
音質的に気に入っている点
YB04の音で気に入ってる点を挙げていきます。
- クセがない
- ナチュラル
- 聴き疲れしない
ひとつめのクセがないというのは長所にも短所にもなり得るのですが、私は長所と感じました。味つけがほとんどなく上流となる再生機の音をそのまま鳴らすという印象です。私が愛用しているヘッドホンのDT 1770 PROとDT 1990 PROも同じような傾向にあるのですが、YB04はさらにクセがないです。クセがないのでどんなジャンルにも合いますが、逆に言うとこれと言って得意なジャンルもないです。まあ、万能タイプの製品の宿命ですね(笑)
全体的にナチュラルな音を出すのも特徴のひとつで、無理をして音を出してると感じることがありません。全体的に音のつながりも不自然なところがなく全体的に滑らかな音を聴かせるところも好印象です。
最後の聴き疲れをしないという点ですが、最初にYB04を聴いたときは特徴がなさ過ぎて正直に言うとあまり魅力を感じませんでした。慣れてきたというのもありますが、聴き始めてから30分くらい経ってから音楽にのめり込んでいることに気がつきました。無理なく自然体でずっと聴いていられる音だなと感じています。愛用しているイヤホン(IEM)のN5005とPinnacle P1のすぐ後に聴いても違和感がありません。最近のBA型を聴くと違和感があることが多かったのですが、YB04はダイナミックドライバーほどではないものの十分な中域と低域の量が確保されているからだと思います。
音質的なデメリット
個人的にあまりデメリットは感じていないのですが、あえて言うならということでデメリットを挙げました。
- 低域がやや物足りない
- 特徴がなく優等生的
低域はやや物足りなさがあります。最近はすっかりダイナミックドライバーとハイブリッド型のイヤホン(IEM)に耳が慣れているので、特に聴き始めは不足感が大きかったのですが慣れると気にならなくなりました。
前述の通り、特徴がないというのはメリットでもありデメリットでもありますが、一般的にはデメリットになるかなと思いました。それくらい中庸でナチュラルな音を出します。DAP(デジタルオーディオプレーヤー)を始めとする上流機器のくせがつかみやすいので試聴用にも合うと思います。これまで書いてきたとおり、無難な音というわけではなく高域の開放感もあれば、低域も下まで出るので高音質を追求しながらも聴き疲れしない音にまとまってるのはCayin社製品の特徴でもあり、好きなところでもあります。
DAPとの組合せ
今回は三つのDAP(デジタルオーディオプレーヤー)で聴きました。どのDAPと組み合わせてもそれぞれに魅力がありましたが、Cayin i5との相性が非常に良かったです。私の好みを反映してるからかどのDAPでもドライでフラットな傾向になったのですが、i5ではドライさがさらに強調されたのと低域もしっかりと出てくれたのが好印象でした。低の量感がしっかりと出るのはDX220、柔らかめの音ならOPUS #3と使い分けが出来るといった具合です。
YB04を使用していて気がついたのですが、どちらかというとDX220 + AMP1 MKIIはi5に近い音でOPUS #3の柔らかい音はAMP9のほうに近いですね。
デザインと質感
形状は一般的なIEM(インイヤーモニター)ですが、デザインは特徴的です。特にハウジングの表面がメタリックでネジも主張が強いです。
ステムは短めで太いです。耳垢ガードがあるのも好印象。
この特徴的なデザインは結構お気に入りです。ジッポライターなんかも昔はネジがワンポイントデザインになってるものを愛用していました。
ビルドクオリティーも非常に良いです。本体はアルミ素材なので見た目からすると軽いです。質感的に少しチープに感じますが、逆に装着感の良さに貢献しています。
本体に付属するケースです。質感もいいですね。
音漏れと遮音性
音漏れと遮音性については、これまで使用してきたユニバーサルタイプのイヤホン(IEM)の中でいまだにWestone 4Rが私にとってベストです。Ar:tioのRK01とPinnacle P1が続くという感じですが、YB04はWestone 4Rと同レベルでした。特に遮音性は耳の奥まで本体を突っ込まなくても違和感がないくらいです。電車の中でも使ってみましたが、まったく問題はありませんでした。さすがに大きめの音は入ってきますのでカスタムIEMほどではありませんが、安全のことを考えるとちょうど良い遮音性ではないかと思います。
音漏れについても同様なので、周囲を気にすることがなく音量を上げることが出来ます。
最近は高域の開放感や抜けを良くするために遮音性が犠牲になっている製品が多いように感じますが、YB04は両方とも良いバランスで実現されていると感じます。
装着感
装着感もWestone 4Rがこれまでもっとも良かったユニバーサルタイプのイヤホン(IEM)ですが、YB04はWestone 4Rと同じレベルにあります。イヤーピースも色々と試しましたが、どのイヤーピースでも高い装着感を得ることができたので本体の形状が私の耳によく合ってるんだと思います。
イヤーピース
試したのは以下のイヤーピースです。
- SpinFit CP100
- SpinFit CP145
- ortofon
- Acoustune AET07
- Spiral Dot ++
装着感が一番良かったのはortofonです。異物感がなくて相変わらず好きです。音のほうは低域が控えめになって高域が目立ちます。高域は非常に滑らかで質も良いです。
二番目に装着感が良かったのはSpinFitです。音のほうはもっともバランスが良くて低域の量感がもっとも多いです。高域は少し目立たなくなりますが、許容範囲内の量感で質も問題なしです。ひとつだけ難があってN5005に着けていたCP100とCP145が両方とも径が太すぎるみたいで耳から外すときにすっぽりと抜けます。まっさらのCP145だと問題ありません。
三番目に装着感が良かったのはAET07です。イヤーピースの軸が少し硬めなので異物感はありますが、装着感は良好です。音のほうは低域の量感が増えます。高域はortofonに比べると滑らかさが少し減ります。
四番目はSpiral Dot ++です。他と比べると少し硬めの装着感ですが、実用上は問題ありません。音は低域の量感が増えますが、高域が少し粗くなります。また全体的にアタック音が強くなりました。
一応、順番をつけましたが4つとも実用するのに問題のないレベルです。装着感だけで言うとortofonが良かったのですが、音も含めて考えるとSpinFitが合いました。AET07もなかなか良かったです。
ケーブル
ケーブルは標準ケーブルしか使いませんでした。コネクタは2Pin型です。UEの埋め込み型のように見えます。本体からコネクタが出っ張ってるタイプですね。個人的にはMMCXのほうがありがたかったのですが、こればかりはこちらが合わせるしかないです。
ケーブルはハイブリッド(銀と銅)がわかりやすいデザインになっています。柔らかくてタッチノイズにも強いのですが絡まりやすいのだけがネックです。耳掛け部分のフックは少し装着がしづらい点があるものの装着感の良さをアシストしてるように思います。
プラグは本体と似たコンセプトのデザインになっています。Cayin社にとって初めてのイヤホン(IEM)ですが、細かいところもしっかりとこだわって仕上げてきたと感じます。
音質的には標準ケーブルで十分と思いますが、上流に素直な製品と感じたので、ケーブルの交換にも敏感に反応しそうです。
音量(鳴らしやすさ)
Cayin i5はLow Gainで音量30から37、DX220はHigh Gainで80から87、OPUS #3もHigh Gainで92から97で聴きました。
さほどパワーは必要としません。試してはいませんが、iPhoneでも鳴らせるのではないかと思います。
まとめ
非常に気に入りました。Cayin社がイヤホン(IEM)を開発していると知ったときは驚きましたし、正直、あまり期待はしていませんでした。初めてのイヤホン(IEM)なので少し時間がかかるのかなと思っていました。ちょうど私が好きな傾向の音であるというところも大きいのですが、ビルドクオリティーや細部のこだわりも高いレベルにあるのでいい意味で私の期待を裏切ってくれました。
使い勝手については前述した通りです。装着感、音漏れ、遮音性とユニバーサルタイプではトップレベルでした。
音については全体的にドライな傾向にあるのがお気に入りです。解像度とレンジの広さはN5005のほうが上ですが、YB04のほうが上流に対して素直でナチュラルな音を出します。また、高域から低域にかけて音のつながりが良く、不自然なところがないのも好印象です。結果的に全体的に滑らかな聴感となっているのも評価が高いポイントです。
そして一番気に入った点は愛用しているヘッドホンのDT 1770 PROと同じ傾向の音を出すところです。上流に対して素直で正確な音を出すというのも1770と似ていると思います。もちろん、ヘッドホンとイヤホンなので出音は違いますけどね。N5005とRK01に期待していた役割を果たしてくれそうです。
RK01を手放したところなのですぐにでも購入したいところですが、DX220を購入したばかりでもあり資金が不足しております(笑)
イヤホン(IEM)を使う時期が終わりそうですし、これからCayin N6iiの新オーディオマザーボードのT01も出てくるので来春くらいに購入できればと思います。他にもFAudioのMinor、OriolusのForsteni MKIIが気になっています。Forsteni MKIIは価格が5万円弱とYB04と同じくらいなのと真空管ポータブルアンプのBA10(OAK)、DAC内蔵ポータブルアンプのBD10(CEIBA)聴いてからドライな音質が気に入っています。ForsteniやFinschiも店頭試聴をして好印象だったので、Forsteni MKIIも一度聴いてみたいと思っています。
今回は以上です。
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