amahikasです。
久しぶりに有線イヤホンのレビューです。有線イヤホンは今年に入ってからゼンハイザーのIE 400 PROとCayinのYB04を購入し、購入済みのAKG N5005を含めると私のポータブルオーディオ史上最高のイヤホン環境が整ったと言えます。もちろん、この先にどのような製品との出会いがあるかわかりませんので「最強」とか「至高」という言葉を安易に使うのは好きではありませんが、現時点ではようやく満足できる環境ができたのは素直に嬉しいです。
しかし、イヤホンに対する興味がなくなったかというとそういうことはなく、面白そうな製品が発売されるといまでも試聴をしたりしています。
さて、そんな中、BQEYZというメーカーからイヤホンのレビュー依頼がありました。いつも通り、正直なレビューを書くという私のポリシーを理解していただいて上で依頼を引き受けました。
BQEYZ Spring 2
最初にBQEYZというメーカーについて触れておきます。中国のオーディオブランドでOEMやODMで実績を作りながら自社ブランドのイヤホンを開発設計しています。KC2、Spring 1などが好評でメーカー名は見聞きしたことがあるものの実際に音を聴くのは今回が初めてです。
メーカーの情報があまりなくて申し訳ないのですが、今回レビューをするSpring 2に話を移しましょう。Spring 2は自社開発の9層ピエゾドライバ+13mmダイナミックドライバ+1BAのトリプルハイブリッド構成が特徴のイヤホン(IEM)です。2019年に発売されたSpring 1の後継機種となります。ピエゾドライバはあまり耳にしませんが、圧電素子を用いたドライバのことだそうで、ラディウス社の「ドブルベヌ」シリーズで採用されたのが有名です。ハイブリッド型というと中域と低域用にダイナミックドライバ、中域と高域用にBAドライバを採用するケースが多いですが、最近は平面駆動型ドライバ、静電駆動型ドライバを採用するケースも散見されます。
Spring 2の場合、3つのドライバを直列に配置しています。おそらくピエゾドライバを高域、BAドライバ高域と中域、ダイナミックドライバを中域と低域に使っていると思いますが、確かな情報を得ることはできませんでした。
ハウジングはアルミ製で質感は高く、ビルドクオリティーも高いです。色は「ライトグリーン」と「ブラック」の2色があり、私は悩みに悩んで「ブラック」を選びました。写真で見るとオリーブに近そうなライトグリーンも魅力的です。
ケーブルの着脱が可能になっており、コネクタは0.78mm 埋め込み型2Pinです。手元にYB04用の4.4mmバランスケーブルがあったので試してみましたが問題なく装着できました。
Spring 2の価格は18,500円です。質感と品質を考えるともう少し高くても良い都さえ感じます。
詳細は公式サイトを参考にしてくださいませ。
- 試聴環境
- 試聴結果
- Bisso Baba / Bob James
- Golden Faders / Fourplay
- Flesh and The Power It Holds / Death
- Master of Puppets / Metallica
- At The End Of The Day / Les Miserables
- Crush / Kelly Sweet
- Rock the Blues Away / AC/DC
- Days of Wonder(Original Mix) / M6
- Prophecy / Their Dogs were Astronauts
- The Brain Dance / Animal as Leaders
- デザインと外観
- イヤーピース
- 音漏れと遮音性
- 装着感
- 音量
- ケーブル
試聴環境
試聴にはメインで使っているDAP(デジタルオーディオプレーヤー)のCayinのN6ii/E01とiBassoのDX220(AMP8-EX)を使いました。両方ともゲインはHighで再生アプリはNeutron Music Playerです。音質関連の設定は両方とも同じにしてあり、イコライザー類はすべて無効です。普段はAMP1 MKIIかAMP9で試聴に使うことが多いDX220ですが、今回はバランス接続での実力も確認したかったのでAMP8-EXを使いました。ケーブルはCayinのCS-4.4BをSpring 2につけました。YB04用のバランスケーブルですね。
バーンイン(エイジング)の状況ですが、この記事は100時間鳴らした後に感想を書いてます。箱出しから30時間鳴らすまでは全体的に硬さを感じました。特に中域から高域にかけてはアタック音が強すぎたり、刺さることがありました。最低でも30時間、余裕を持って50時間ほど鳴らしてから聴き込むことをお薦めします。
イヤーピースは色々と使って迷った挙げ句、SpinFitのCP145を使いました。最後まで迷ったのはAcoustuneのAET07です。
試聴に使う音源はいつもと同じ曲です。
主にCDから取り込んだAppleロスレス(ALAC)で、試聴に使う曲や聴きどころについてはこちらを参考にしてくださいませ。
試聴結果
試聴環境について改めて書いておくとN6ii/E01では3.5mmのシングルエンドに接続し、ケーブルは付属品を使用しています。DX220+AMP8-EXはYB04用のバランスケーブル(CS-4.4B)を使ってAMP8-EXの4.4mmバランス端子に接続しています。付属ケーブルの出来についても評価したかったのでこのような構成にしました。
Bisso Baba / Bob James
派手さはなく落ち着いた聞き心地です。シンバルはややシャカシャカと聞こえますが、深さも表現できてるので軽かったり、安っぽくは聞こえません。低音は十分ですね。量感は普通か少なめと感じます。深さはYB04と比べるとやや浅いかなと感じるくらいです。
N6ii/E01とDX220+AMP8-EXの聞き比べではDAPの違いは出たものの、Spring 2やケーブルによる違いは感じませんでした。
Golden Faders / Fourplay
出だしからシンバル音の滑らかさ、ベースとギターの滑るようなスピード感がとても気持ちいいです。中域と低域の厚みとか押し出しの強さよりも高域の繊細さや開放感が強調される傾向にあるため、私の好みの音になっています。この手の音楽は演奏者も一音一音丁寧に弾いてるものですが、それがよく伝わる鳴り方で変にいじくったり素直なのは好感です。
N6ii/E01とDX220+AMP8-EXの聞き比べはこの曲も一緒です。
Flesh and The Power It Holds / Death
デスメタルを聴くには少々、低音の量感が少ないですね。下まで重低音は出てますが、量感や厚みはもう少し欲しいところです。中域と高域については迫力、スピード感ともに申し分ないです。特に高域の開放感は心地良くて、シンバル、ボーカル、空気を切り裂くようなギター音の表現力は高いです。中域で目立つのはギターリフとドラムですね。ドラムはスネアやタムのアタック音が鋭すぎず、緩すぎず、良い塩梅です。
5:00くらいからのベースとギターのソロパートは鳥肌が立つくらいの緊張感です。
N6ii/E01で聴くほうが低域に量感が出ます。DX220+AMP8-EXだと高域寄りのバランスに感じたのですが、こちらはフラットに近いです。音場は左右がやや狭くなりますが、前後と奥行きなどはN6ii/E01のほうが出ます。
Master of Puppets / Metallica
前の曲よりも低い低音が録音されてないので低音の量感に対する不満は少ないです。むしろドラムとギターリフにスピード感があって爽快でさえあります。スネアの音についてはやや刺さる傾向にあります。クセというほどではなく、アタック音が強い音について刺激が強くなる傾向にありますね。
N6ii/E01でもこの傾向は一緒でした。低域の量感が増すもののドラムのアタック音は少々きつめです。
At The End Of The Day / Les Miserables
音場が一気に広がります。冒頭のパーカッションと歓声は細かく滑らかに聞こえます。高域に関しては量、質ともに高いレベルにあります。中域は控えめなタイプでさほど主張はしませんが、解像力が高く音楽を分析的に聴くのに一役買ってます。低域はさらに主張が少ないと感じます。それでも低いパートを担当するコントラバスやチェロの音はわずかに聞こえます。
N6ii/E01だと奥行きが出てさらに会場の広さが伝わります。コントラバスなんかも生き生きと鳴りますね。逆に女声コーラスやパーカッション、吹奏楽器系の高い音の開放感はDX220+AMP8-EXのほうが心地良かったです。
Crush / Kelly Sweet
この曲くらい音の数が少ないと低音がしっかりと出ているのもわかります。ボーカルだけでなく、ベース、アコギ、ドラムとそれぞれの楽器がいい音で録音されているのをそのまま鳴らしてくれてます。クセがなく素直な製品ですね。中間部のシンバルですが、余韻は滑らかに残るもののアタック音は少し聴きづらくなります。メタリカでも感じましたが、ドラムのアタック音が強くなると聴きづらくなる傾向にありますね。
Rock the Blues Away / AC/DC
ドラムのアタック音を確認するのにAC/DCを聴いてみました。この曲はOKです。録音状態が良かったり、演奏者の出す音で聞こえ方も随分と変わりますね。ただし、傾向としてはモニターとして使うのに適してると音だと思います。ウォームでウェット且つ甘い音にはなりません。
Days of Wonder(Original Mix) / M6
トランス系も聴いてみましょう。高域と中域はいいです。特に高域ですね。開放的な音の広がり方はこの価格ではなかなか聴けないと思います。低域も悪くありませんが、トランス系を楽しむにはやや量的な面で不満が残ります。また、アタック音が強くなると聞きづらくなるのはメタル系の音楽と一緒ですね。
Prophecy / Their Dogs were Astronauts
エレキギターのキレが心地良いですね。ドラムのアタック音もさほど強くないのでこの曲では聴きづらくなりません。それよりシンバルの滑らかさが非常に気持ちいいですね。メロディーを奏でるリードギターの雄大さと繊細さはどちらもよく表現されています。
The Brain Dance / Animal as Leaders
この曲も良いですね。下で流れる8弦ギターのベース音が優しく耳を包んでくれると思ったら、上のほうでアコギっぽい音がきれいに細かくメロディーを奏でてくれます。
音の数が少ない曲だとよくわかりますが、全体的にキレやスピード感があるだけでなく、雄大に包み込むような音を鳴らすのも得意です。
デザインと外観
デザインと外観はいつも通り、写真で見ていきましょう。
まずは外箱です。サイズが大きくて派手な箱が多い、中国のメーカーにしては珍しいですね。個人的には収納スペース、物流の手間などを考慮すると非常に好感が持てます。
開封です。イヤホン本体の他に、ケーブル、イヤーピース、ブラシ、収納ケース、説明書です。イヤーピースはシリコンタイプが「Atmosphere」と「Reference」の2種類があり、それぞれSMLサイズが付属します。ウレタンタイプは1ペアのみで劣化を防ぐためにプラスチックの小箱に収納されています。
こちらが集のケースです。これと言って特徴はありませんが、サイズ、機能、衝撃耐性ともに必要十分です。
Spring 2本体です。カラーリングはブラックです。赤のワンポイントが気に入ってブラックにしたんですが、いろんなブログを見てるとライトグリーンもいいなぁなんて思いました。他の製品ではあまり見ない色合いですしね。
ケーブルと写真を撮りました。本体は結構コンパクトです。
Cayin YB04とサイズを比べました。YB04は少し大きめですがSpring 2も小さいほうだと思います。
全体的に考えてSpring 2は小さくて軽いのがメリットです。見た目も質感も安っぽさがなく、いい塩梅にまとまってると思います。
イヤーピース
Spring 2に標準で付属するイヤーピースはどれもいまひとつでした。良かったのは、SpinFit CP145、Acoustune AET07、Spiral Dot++(EP-FX10)の三つです。SpinFitと同じ頻度で愛用しているOrtofonのイヤーピースは高域過多になってしまって合いませんでした。Spiral Dot++(EP-FX10)は高域の開放感が強くなるのは良かったんですが、やや低域が控えめになりました。
最終的にSpinFit CP145とAcoustune AET07が残りました。CP145のほうが高域の開放感が良く、AET07は低域の量感が良かったです。この二つに関しては好みで選びました。
最終的にCP145を使いましたが、AET07との相性も良かったです。
音漏れと遮音性
音漏れも遮音性も優秀でした。特に音漏れはほとんどありません。遮音性についてはイヤーピースにもよりますが、本体のサイズが小さいため耳を覆う面積が少ないです。
そのわずかな隙間から外部音が侵入してきます。YB04とIE 400 PROほど遮音性は良くなかったんですが、AKGのK5005よりは良好ですし、私が所有したりじっくり試聴をしたイヤホン(含むインイヤーモニター)の中でも十分な遮音性能です。日本の地下鉄で使う程度なら問題はありません。
装着感
装着感も良好です。本体のサイズが少し小さめなのでこちらもYB04とIE 400 PROほどではありませんが、十分に快適です。
音量
音量ですが、N6ii/E01だと46から55、DX220+AMP8-EXだと70から78で聴きました。
ケーブル
標準で付属するケーブルはシングルエンド接続でN6ii/E01と組み合わせて聴きました。結論から言うと、この組合せが一番良かったです。CayinのCS-4.4BをSpring 2につけて4.4mmバランス接続でDX220+AMP8-EXで聴きましたが、高域寄りになって好みから少し外れました。ちなみに標準で付属するケーブルとDX220+AMP9、DX220+AMP1 MKIIで聴いてみました。AMP8-EXよりも低域の量感が増しました。
試聴してる中でCayinのCS-4.4Bケーブルの影響が大きいのかなと思ったんですが、そうでもないようです。
まとめ
初めてBQEYZというメーカーの製品を聴きました。Spring 2は全体的に好印象です。特に高域が質量ともに良かったです。まず開放感がありますし、音の粒が細かくて滑らかなのは私の好みですね。さらに繊細さな表現がうまいのでアコースティック系の楽器との相性が良いと感じました。逆に音の密度が高くてアタック音が強いメタル系の音楽は少し苦手にしているように感じました。低域にもう少し量感があるとこの手のジャンルはうまく中和できたりするんですが、低域の量感が少なめで全体的に高域寄りなのもSpring 2の特徴のひとつです。
全体的には少し乾いた傾向の音でリスニングと言うよりも分析的に聴くほうが合うと思います。クセがなく素直な傾向にあるのも分析的に聴くのが合うと感じた理由です。
低域の量感が少ない点については好みが分かれると思いますが、上流に素直なのでN6ii/E01のように深い低音をそれなりの量感で聴かせるDAPだとさほど不足感はありませんでした。むしろちょうど良い塩梅でしたね。
私が所有している他の製品と比べるとIE 400 PROは低域寄りなので真逆の帯域バランスです。しかし少し乾いた傾向でクセがないのは似ています。Spring 2の高域とIE 400 PROの低域を合わせたようなバランスなのがN5005です。ただ、解像力についてはN5005が群を抜いています。そのN5005と同じ程度の解像力があり、帯域バランスがフラットなのがYB04です。YB04と比べるとSpring 2のほうが高域は目立ちますが、全体的に見通しが良いのはYB04です。
Spring 2のデメリットを上げるとすれば遮音性くらいです。小さくて軽いのはメリットですが、もう少し形とサイズを工夫して耳への接着面を増やすと良いのかなと思います。
価格の割には私が所有しているイヤホン(IEM)にひけをとらない音を聴かせてくれました。BQEYZの今後に期待したいと思います。
今回は以上です。
なお、この記事を書くにあたってはbisonicrさんの記事を参考にしました。
中国製のイヤホンについては私よりも造詣が深く、数多くの製品をレビューされてますので参考にしてくださいませ。
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