密閉型ヘッドホン DT 770 PRO X Limited Edition と DT 1770 PROの聞き比べ

ヘッドホン
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amahikasです。
先日、購入したDT 770 PRO X Limited Edition(以降、770 PRO X LE)もだいぶこなれてきました。購入をしてから自宅で使ったり、外に持ち出してみたりしました。バーンインも100時間以上鳴らしたので準備はOKかなと思います。
770 PRO X LEの製品概要や使い勝手についてはファーストインプレッションの記事で書いたので、この記事では主に音質面について書きたいと思います。音質面は私がメインで使用している密閉型ヘッドフォンのDT 1770 PRO(以降、1770)と聞き比べをしながら感想を書いていきます。
本当はより価格の近いDT 770 PROかDT 700 PRO Xと聞き比べをしたほうが参考になると思いますが、私は1770とDT 1990 PROしか所有をしていないのでこの組合せとなります。

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聞き比べ環境

770 PRO X LEとDT 1770 PROのケーブルは両方ともORBのClear forceをつけました。イヤーパッドはDT 770 PRO X LEが標準のベロアパッドで、1770は標準の合皮パッドをつけています。両方とも合皮パッドをつけたいところなのですが、770 PRO X LEは標準で付属するイヤーパッドがベロアだけなのであえてベロアパッドで聞き比べをします。

再生はいつもの聞き比べ環境です。MacBook Proにインストールしている再生アプリのAudirvana 3.5.50で2024年5月3日時点の最新バージョンです。今回の聞き比べではiTunes Integrated Modeで使用しています。
ヘッドフォンDAC/AMPはGrace Design m9XXを使います。MacBook ProとはUSB接続しています。

m99xと770 PRO X LE

m99XXと770 PRO X LE

音源はいつも通りの試聴曲を使います。主にCDから取り込んだAppleロスレス(ALAC)です。iTunesと同じミュージックライブラリをAudirvanaに読み込ませています。
試聴に使う曲や聴きどころについてはこちらを参考にしてくださいませ。

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770 PRO X LEとDT 1770 PROの聞き比べ

早速、770 PRO X LEと1770の聞き比べをしていきます。

Golden Faders / Fourplay

まずは770 PRO X LEから聞きます。低域に量感がありふくよかな聞き心地です。高域はやや控えめですがシンバル音はシャープ且つ品が良く鳴ってくれます。中域はやや粗さを感じます。特にスネアの音を強打したときにアタック音がやや粗くなります。
次に1770で聞きます。770 PRO X LEは注記と低域が少し強めですがフラットに近いバランスですが、1770はよりフラットに近く、高域がより目立つ傾向にあります。
770 PRO X LEで感じたスネアのアタック音の粗さもなく安定して鳴りますね。1770に対する私のイメージでもあるんですが職人が淡々と仕事をするように淡々と高品質の音を鳴らし続けてくれます。
低域については770 PRO X LEのほうが量感があって好みが分かれるところだと思います。

音量ですが、770 PRO X LEは72、1770は78で聞きました。

Bisso Baba / Bob James

770 PRO X LEから聞きます。前の曲と違って中域の粗さを感じませんでした。この曲はアタック音がさほど強くないからでしょう。落ち着いたベースの上でピアノとボーカル、パーカッションが気持ちよく鳴る感じです。ベース音に量感があるのと中域と低域の空間が広いので、曲全体をゆったりと鳴らしてくれますね。
1770で聞くと明らかにピアノとボーカル、パーカッションが目立ちます。ベースはこちらもよく鳴っていますが770 PRO X LEのような量感はありません。空間の広さもないので人によっては1770は少し中域と低域が物足りなく感じるかもしれません。

音量は770 PRO X LEは73、1770は80で聞きました。

At The End Of The Day / Les Miserables The 2010 Cast

冒頭のパーカッションと歓声はきれいに聞こえます。中域から低域にかけても厚みがあり、より迫力を感じます。女声コーラスが入ってくる最初の場面ではスピード感もあって聞いていて心地が良いです。全体的にオーケストラよりもボーカルが目立つ傾向にあります。
1770は770 PRO X LEよりも全体的に繊細に聞こえます。迫力ももちろんあるのですが、やっぱり音がよく分離されているのと、細かな音を聞き分けやすいです。中域と低域が締まっているので770 PRO X LEでは聞こえない音も聞こえたりします。
ただ、770 PRO X LEでは弦楽器の小気味良さがとても印象的でした。場面転換をした雰囲気がよく出ています。

音量は770 PRO X LEは70、1770は78で聞きました。

Flesh and The Power It Holds / Death

770 PRO X LEはこの曲にもよく合うなと思います。ギターリフのディストーション、バスドラの迫力とスネアのアタック音などすべてがうまく表現されています。
これまで聴いてきた印象からもっと中域と低域が支配するのかなと思っていたのですが、高域もしっかりと聞き取れます。4:17秒からのギターソロでは静寂とヒステリックなギター、うねるベースがいい感じに聞こえてきます。

聞き比べの様子

聞き比べの様子

この曲の場合、1770との差は縮まったと感じました。中域と低域の量感や高域の目立ち方など細かな点で差はありますが、ブラインドテストをしたらまずわからない差と感じました。

音量は770 PRO X LEは70、1770は78で聞きました。

Days of Wonder (Original Mix) / M6

低域は申し分ないですね。適度なキレと音の広がりがあります。中域も音の広がりの点で空間が広いと感じます。各楽器の聞こえ方も丁寧でパートによっては滑らかさも感じました。
少し残念なのはパーカッションの音です。高域がつぶれて聞こえるので、もう少し丁寧に鳴らして欲しいところです。
1770は770 PRO X LEほど音の広がりはありませんが、各帯域を丁寧に鳴らしていて違和感はありません。ドラムのアタック音は1770のほうが鋭くキレがあります。770 PRO X LEは少し丸まった音になっているのが違いです。
高域のパーカッションの聞こえ方に少し違和感がある点以外は、この曲は770 PRO X LEで聞いたほうが気持ちが良かったです。

音量は770 PRO X LEは72、1770は81で聞きました。

The Millionaire Waltz / Queen

左右、上下の定位は文句なしです。ベースのピック音も細かい部分まで鳴らせています。
2:22からのハードロックパートではシンバル音などの音がつぶれずに聞こえてきます。前の曲で高域のつぶれが気になったのでThe Millionaire Waltzを試してみたのですが、この曲では問題ないですね。
1770で聞いた結果、ベースの音は1770のほうが直線的で好きです。770 PRO X LEのほうでは少し膨らむのが気になりました。ふんわりと包み込むような音に鳴るので、こちらの音のほうが好きという方もいらっしゃるかと思いますが、この曲のベースに関しては直線的な音を聞きたいんですよね。
その他ではボーカルが目立ちやすい傾向にあるので、コーラスが聞き分けやすかったです。1770のほうが丁寧に音が重ねられている様がよく伝わってきました。770 PRO X LEは雰囲気はよく伝わりますが、ディティールは1770のほうがわかりやすいです。

音量は770 PRO X LEは78、1770は86で聞きました。

Master of Puppets / Metallica

中域と低域の量感が増すので聞きやすいですね。ただ、細かな音の再現力は1770のほうが上で、個人的には1770のほうが好きです。ギターソロのパートでは1770のほうがしっかりと背景が黒くなって音が浮かび上がってきます。立体的な表現もいいですね。770 PRO X LEは横方向の広がりは良いのですが、奥行きには乏しく立体的な表現は劣ります。この曲については770 PRO X LEと1770の差が大きかったです。

音量は770 PRO X LEは74、1770は84で聞きました。

Crush / Kelly Sweet

女性ボーカルも聴いてみましょう。前に出てくるボーカルとうなるベースが心地良いです。1770で聞くよりも目立つのですが、誇張しすぎとは感じない絶妙なバランスが良いですね。
1770は各パートの細かな音が伝わってくるのとメリハリがよくついています。ボーカルとベースは前方で鳴り、アコギやドラムは後方で鳴っているのがよく伝わってきます。

音量は770 PRO X LEは74、1770は83で聞きました。

The Brain Dance / Animal as Leaders

下のほうで雄大に鳴るベースの音がよく表現できています。
1770はベースの量感が控えめですが、より立体的な表現がうまくて私はこちらのほうが好きです。

音量は770 PRO X LEは72、1770は82で聞きました。

音に関する総評

770 PRO X LEと1770を聞き比べた結果についてまとめていきます。
一通り試聴に使う曲を聞いてみてどちらもベイヤーダイナミック社のモニターヘッドフォンとして質が高いと感じます。好みが分かれるところですが、基本的に全体的に硬質でキレと抜けのいい開放的な音を楽しむことができます。両機とも密閉型ですが、こもった感じは一切ありません。
帯域のバランスは770 PRO X LEが中域と低域が強めで高域はやや控えめです。それでもベイヤーダイナミックのモニター機なので高域に物足りなさは感じませんし、音源によっては刺さることもあると思います。対する1770はフラットに近いバランスです。770 PRO X LEと比べると低域は下までよく出ています。770 PRO X LEは量感はありますが1770ほど下まで出ていないという印象です。高域についても同じで1770のほうが上までよく出ていて開放感も勝っています。
私は1770のバランスのほうが好きですが、770 PRO X LEのバランスのほうが好きという方も多いのではないかと思います。好きな音楽の趣味も変わっていたりするので一般的には中域と低域の量が多めの770 PRO X LEのほうが好まれるのではないでしょうか。

帯域のバランスだけでなく空間の広さについても違いを感じました。
770 PRO X LEは左右(横)に空間が広く、1770は前後(奥行き)と上下(縦)が特に広いと感じました。
各楽器の聞き分けや細かな表現は1770のほうが上です。特に低域と中域の違いは顕著で1770は中域と低域に隙間が多いので細かな音を聞き分けるのが容易です。770 PRO X LEの場合は、メインとなる中域と低域の音が空間を塗りつぶしてしまって細かな音が聞こえないことがありました。
とは言え、価格差を考えると770 PRO X LEの解像力は上出来です。1770のほうが優れていますが、それは結構集中をして聞き比べているからわかることで、何気に音楽を聴いている分には気がつかないことがほとんどだと思います。さらに外出先で聞く場合は環境音なども混ざるのでなおさらですね。

外見について

ファーストインプレッションの記事にも写真をいくつか掲載しましたが、改めて外見の違いがわかるように写真を撮影しました。

右が1770、左が770 PRO X LE

右が1770、左が770 PRO X LE

ヘッドバンドの裏側がわかるように撮影しました。1770には切れ込みがあって770 PRO X LEにはありません。気のせいかもしれませんがイヤーカップは1770のほうがやや太いように見えます。

右が1770、左が770 PRO X LE

右が1770、左が770 PRO X LE

ヘッドバンドの比較です。
こちらでも1770のほうが少し太く見えます。
ヘッドバンドは装着方法も異なります。
ちなみに1770のヘッドバンドは一度交換をしています。だいぶ使い込んだので最後はボロボロになってしまいました。(笑)
しかしそこはベイヤー製品だけあって私のような不器用人間でも簡単に交換をすることができました。

右が1770、左が770 PRO X LE

右が1770、左が770 PRO X LE

こちらはイヤーカップからヘッドバンドの連結部分です。

音漏れと遮音性

770 PRO X LEを何度か外で使ってみました。
標準のベロアパッドをつけているので合皮パッドをつけている1770よりも音漏れは多いです。
結果的に混雑した電車の中では音量を絞る必要があるので物足りなく感じました。
遮音性についても同様で1770よりも外の音が入ってきます。
770 PRO X LEにベロアパッドをつけているのはこの生地を書くためなので、今後770 PRO X LEに1770と同じ合皮パッドをつけて試したいと思っています。
おそらく合皮パッドに変えれば1770と同程度の音漏れと遮音性になるのではないかと思っています。

装着感と側圧

装着感は1770よりも軽くて良いです。MEZEの99 Classicsと同等ですね。側圧は意外と緩めなので圧迫感は少ないです。
私は1770をほぼ外で使うのですが、770 PRO X LEのほうが軽量で側圧もやや緩いので長時間の装着も気になりません。ただ、合皮パッドに変えた場合、側圧はほとんど同じになると思いますので770 PRO X LEの利点は軽量くらいとなると思います。

音量(鳴らしやすさ)

音量は770 PRO X LEが70から78、1770が78から83でした。770 PRO X LEは併用しているAKGのK275とほぼ同じくらいの鳴らしやすさです。
私は比較的大きな音で聴くほうです。インピーダンスの低い770 PRO X LEは出力の弱いポータブル機器でも鳴らしやすいものの音が割れたり聞きづらくなる限界点に達するのも早いです。1770はインピーダンスが高い分、余裕のある鳴り方をする反面、ポータブル機器では鳴らしにくかったりします。
前述の通り、770 PRO X LEは外で使いやすいのに感心しました。
1770に比べて軽いこと、ポータブル機器でも鳴らしやすいこと、中域と低域が厚みなどは外で聞くのに適しています。
音漏れについては合皮パッドが解決してくれることを期待しています。

まとめ

個人的には1770が大好きなので1770を褒めることの方が多かったと思いますが、770 PRO X LEもよくできた製品です。特に最近は円安の影響でオーディオ機器の価格が上がっていますが、現時点で約35,000円の価格でこのレベルの音を出す密閉型のヘッドフォンはあまり市場にないと思います。1770と比較をしても倍近い差ですから約35,000円という価格でよく出せたなと思います。

770 PRO X LEの良さは音にもあって、1770と比べてリスニングに使うのに向いています。いくら1770が好きと言ってもたまにリスニング寄りの製品で音楽を聴きたくなります。こういう気分の時はMEZEの99 Neoを使うことが多いのですが、今後は770 PRO X LEを使うことも増えるでしょう。
過去にもAmiron HomeやT5p(第2世代)などリスニングに適したベイヤーダイナミック社の製品を試聴しましたが、いまひとつ好みに合いませんでした。理由はいくつかあるのですが、音質面で言うと私が好むベイヤーダイナミック社の音が損なわれていると感じたのが大きな要因です。Amiron HomeやT5p(第2世代)も良い製品なのですが、1770と併用してみようと思うほどではありませんでした。
770 PRO X LEは私が好むベイヤーダイナミック社の音を内包しつつリスニングに適したチューニングになっています。価格面のメリットも大きいのですが、音質面を考慮しても1770と併用できる製品と考えています。
私が好むベイヤーダイナミック社の音は好き嫌いもあると思っていますが、770 PRO X LEは中域と低域に厚みがある分、全体的に柔らかい聴感になっているのも特徴のひとつです。高域も少し控えめに鳴っているのでベイヤーダイナミック社の音が苦手という人にも向いてるのではないかと思います。

今回は以上です。
以下の記事も参考にしてください。

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