amahikasです。
先日、beyerdynamicが新たに発売したT1 3rdとT5 3rdを試聴してきたのですが、ちょっと残念な音でした。まだバーンイン(エージング)が済んでないと思うので、時間が経ってからもう一度聴いてみたいと思います。
さて、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)のレビューが続きます。
今回は韓国のKontinumという会社のDAPを紹介します。価格が私の予算を超えてるのとAndroidアプリも使えそうにないので、機会があれば店頭で試聴をしてみようくらいに思っていたんですが、縁があって試聴機を貸していただくことになりました。
Kontinum K100
Kontinumは韓国の会社でAstell&Kernブランドの創設者James Lee氏が独立をして創立しています。K100が同社で初めてのDAPとなります。
K100の特徴はバッテリーです。電気自動車(EV)に使用される21700型リチウムイオンバッテリー(4,900mAh/3.6V)を採用しています。熱によるバッテリーの劣化をできるだけ防ぐために、メイン基板から独立したバッテリーハウスと呼ばれる空間にバッテリーを収納しているだけでなく、交換も可能になっています。気に入っていたDAPもバッテリーが劣化してしまうと継続して使うのが難しくなりますが、K100はこういったDAPのバッテリー問題を解決するのをひとつの目的として開発されています。
K100のスペックを見ていきましょう。DACはAKMのAK4497EQをふたつ搭載したデュアル構成になっています。充電とデータ転送用にUSB Type-C端子を備えています。出力は3.5mmシングルエンド、2.5mmバランス、USBデジタル出力に対応し、3.5mm出力端子は光デジタル、ラインアウト兼用です。対応オーディオファイルもMQA、WAV、FLAC、AAC、ALAC、AIFF、WMA、MP3、OGG、ネイティブDSDなどと必要なものは対応しています。ストレージは内臓が128GBでmicroSDカードスロットをひとつ搭載しています。
ハードウェア面では5インチのタッチディスプレー(720×1280)を採用していて重量は295gです。CPUはARM Cortex-A9 1.4GHzでメモリは1GB、OSはAndroid 5.1がベースになっています。OSはしっかりとカスタマイズされていてAndroid OSのホーム画面は表示できず、Google Play Storeも使用不可です。OS周りの仕様や使い勝手は私が所有していたOPUS #3に似ていて、任意のAndroidアプリをインストールするとなるとAPKファイルをK100内部にコピーして設定メニューからインストールをする必要があります。無線LAN(Wi-Fi)は802.11 b/g/n(2.4GHz)及びBluetooth 4.0です。対応コーデックについては不明でした。
価格は税込みで173,800円です。
詳細については公式サイトを参照願います。
試聴環境
音の感想を書く前に試聴した環境について書いておきます。
試聴に使った機器
以下の機器を試聴に使いました。
- K100 → DT 1770 PRO
- K100 → DT 1990 PRO
- K100 → YB04
DT 1770 PROとDT 1990 PROはORB Clear forceをケーブルとして使用しています。YB04は標準ケーブルで聴きます。いずれも3.5mmのシングルエンドで聴きました。バランス接続でも聴きたかったんですが2.5mmの環境はほとんど残ってません。K100の出力設定はGAINがHIGH、DSP modeは32bit(XMOS)で試聴をしています。バーンイン(エージング)については70時間ほど鳴らしました。箱から出した状態でもそこそこの音を出しますが、50時間を超えたところから細かさと滑らかさが上がり、全体的な音のつながりも良くなります。
試聴曲
音源は主にCDから取り込んだAppleロスレス(ALAC)です。
試聴に使う曲や聴きどころについてはこちらを参考にしてくださいませ。
音の感想
試聴の際は音量を100から115にして聴きました。最大だと150まで上がりますので1770や1990を鳴らすには十分です。
Golden Faders / Fourplay
一聴して音の細かさと滑らかさに驚かされました。少し柔らかめの音でとても聴きやすいのと繊細な表現力が高いです。低域はタイトな一面もあるもののN6ii/E01と比べると少し柔らかめで、音の広がりや優しく包み込むような空間表現を得意としています。
帯域バランスはフラットに近いです。この曲だとシンバルの音が非常に快適に鳴るのが印象的です。細かさや滑らかさは当然ですが、適度な開放感があって心地良いですね。
Bisso Baba / Bob James
この曲も良いですね。中域は主張しすぎない程度に鳴っていて好感です。低域は前の曲と同じようにウェットな傾向にあって量感が多めです。とはいえ、くどいというレベルではないいのと適度にキレもあるので、個人的な好みからは外れないです。1770で聴いても開放型の1990に負けない開放感と抜けの良さがあるのはいいですね。
At The End Of The Day / Les Miserables
この曲も全体的によく聴かせてくれます。細かいところでいうとスピード感の表現が乏しいです。サクサクとキレよく聴かせるよりもリッチに、雰囲気よく聴かせるのが得意と感じます。
Flesh and The Power It Holds / Death
ドライで音の粒が細かい高域と、量感がある中域と低域の組合せはメタルを聴くのにも合います。もう少し中域と低域に厚みがあったほうが迫力が出て好みという方もいると思いますが、私はこれくらいのバランスが好きです。迫力とスピード感をしっかりと出しながらも高域のシンバルやギターの音を表現しています。音の密度が高く、情報量が多くても苦にしないのは好印象です。
Master of Puppets / Metallica
この曲も良いですね。スピードと迫力、各楽器の音の分離のバランスが良いです。この曲では高域の余韻が長く残ると感じました。演出過多と言うほどではないのですが、この余韻のおかげで他の曲も開放的に聞こえるのかもしれません。
この曲ではドラムに注目して聴いてみたんですが、アタック音の鋭さと聴きやすさのバランスがいいですね。アタック音を強調しすぎると聞きづらくなったりするんですが、K100はアタック音の強さを少し軽減して聴きやすくなるもののひとつひとつの音はちゃんと聞こえるのでバランスが良いと感じます。
Crush / Kelly Sweet
ボーカルが少し目立ちすぎですが、全体的にこの曲が持つ雰囲気をよく表現できてます。包み込むようなベース音、バックで繊細に流れるアコースティックギターと非常に気持ち良かったです。前の曲ではドラムのアタック音について言及しましたが、この曲ではベースのアタック音が良いですね。キレもありますが、包み込む音を出すのもうまいですし、柔らかさの表現が秀逸です。
Days of Wonder(Original Mix) / M6
トランス系も聴いてみます。個人的には開放的な高域と低域のキレとウォームさのバランスが良かったんですが、低域が物足りないと感じる方もいると思います。低域は下までよく出てますが、量感や厚みに関して過剰な期待は禁物です。
Prophecy / Their Dogs were Astronauts
全体的な音の細かさと滑らかさはこれまでと同じなんですが、アタック音の強さやギターリフの生々しさが増します。高域についてはわりと素直に鳴らす傾向にあるので、録音状態が悪ければそのまま鳴らしますね。中域と低域についてはそれなりに演出をしてくれます。
The Brain Dance / Animal as Leaders
K100ともっとも相性が良かったのはこの曲です。冒頭のアコギの繊細さ、次に来るシンバル音の細かさと滑らかさ、その次にくるベース音の雄大さとどの楽器の音も非常に良く表現されてます。高域と中域の繊細さや細かさ、抜けの良さを味わうなら1990との相性が良くて、低域の量感と厚みを味わうなら1770が良かったです。
開封と同梱物
写真で見ていきましょう。
開封をすると同梱のウェストバッグが表れます。DAPの同梱物としては珍しい一品ですが、間違いなく後述するK100の携帯性を考慮してのことと思います。
その他には左上の革製スタンド、USBケーブル、ディスプレイ保護フィルムが同梱します。
革製スタンドを開くと中はこのようになってます。8つあるビニールはなんだろうと調べていたところ、マイクロSDカードホルダーであることがわかりました。これは意外と便利かもしれませんね。
K100本体とウェストバッグを一緒に撮影しました。
2年前から愛用しているコロンビアのベルトポーチとも撮影しました。
外観
写真で外観を見ていきましょう。
K100本体です。
こちらはK100の底面です。非佐里からmicroSDカードスロットとUSB端子です。
K100の右側面です。電源ボタンと音量ホイールが配置されてます。
K100の上部です。こちらは3.5mmシングルエンドと2.5mmバランス端子が装備されています。
K100の左側面には三つのボタンがあり、曲飛ばし、停止/再生、曲戻しとなっています。
K100の裏はこのようになっています。本体下部の盛り上がりがわかりますかね。この下部にバッテリーが収納されています。
左がK100で右がN6iiです。K100のほうがひとまわり大きいです。特に高さがあります。
左がK100で右がN6iiの底面です。K100は底面が厚くなってます。
上面はK100のほうが薄くなります。こうして見るとN6iiもそれなりに厚みがありますね。
K100の側面です。このアングルで見ると本体下部のバッテリーハウスのサイズがわかるかと思います。
せっかくなのでバッテリーハウスも開けてみました。
公式サイトに「ご自身での交換はせず、不具合や異常などバッテリー交換が必要な場合は必ずカスタマーサポートにご連絡ください。」と記載があります。たまにバッテリーハウスを開けてバッテリーの状態を確認しても保証が切れるわけではないようですが、劣化や異常がある場合はメーカーに問い合わせるほうが良いと思います。予備バッテリ―的な使い方を含め、市販のバッテリーを購入して交換した場合は自己責任になるのは自明です。状態にもよると思いますが、メーカーにて純正品を入手するか交換してもらいましょう。
詳細は公式サイトの「バッテリーにかかわる保証規定について」を参照してください。
参考までにバッテリーハウスの取り外しに使ったトルクスドライバーを紹介しておきます。
デザインに関する考察
K100のデザインについては賛否両論あると思います。個人的にDAP(デジタルオーディオプレーヤー)は上着のポケットかポーチに収納することが多いため、「無し」とまでは言いませんが収納がしづらいのは明白です。特にスーツのポケットは普通のDAPを入れていても目立つのにK100だとかなり目立ってしまうでしょうね。
一方、「バッテリー交換ができる」というチャレンジのためにこういうデザインになったと思うと納得感もあります。意外と見落とされてきたDAPのバッテリー問題ですが、私はバッテリーの寿命とOSバージョンを考慮して「3年」使うことを想定しています。3年程度しか使わないものに10万円以上出費するのは抵抗があるため、自分なりの予算上限を10万円としています。(もちろん例外もあります)
K100はこのDAPのバッテリー問題に真っ向からチャレンジをしたと評価していますので、デザインや使い勝手の悪さについては多少目をつぶってもいいと思っています。デザインや使い勝手が良くても数年でバッテリーの寿命によって使えなくなるDAPよりもバッテリーを容易に交換できた方がいいこともあります。もちろん、DAPメーカー各社もバッテリーの問題は認識しているので、安価でバッテリー交換をしてくれるメーカーも存在します。
ちなみに、今回の試聴ではK100を携帯することが少なく、自宅で据え置き機器のように使うことが多かったです。据え置きとして使う場合、このデザインが意外と使いやすかったです。
使い勝手
K100の使い勝手についてソフトウェアとハードウェア両面で感想を書いていきます。
設定とユーザーインタフェース
ベースとなっているOSのバージョンが同じとあって私が過去に所有していたOPUS #3と操作感は似ています。ただ、OPUS #3に比べるとメニュー構成がさらに洗練されて使いやすくなっています。基本的にKontinum社のアイコンを押すだけですべてのメニュー項目にアクセスが可能です。それとホームボタンと戻るボタンが常時、表示されるのも使いやすいです。OPUS #3の時は画面下からスワイプをして戻るボタンを表示させる仕様だったと記憶しています。
こちらがメインメニューです。画面左上部にあるメーカーのアイコンをタップするとメニューが左から出てきます。前述の通り、画面下部にはAndroidでお馴染みのホームボタンと戻るボタンがあります。
メインメニューの構成はSongs、Albumsなどと他のDAP(デジタルオーディオプレーヤー)と同じ項目が並びます。
少し変わってるのは「Applications」です。この「Applications」メニューではAndroidアプリのインストール、起動、削除などを行います。
Androidアプリの使い勝手はOPUS #3とほとんど一緒です。ただし、Neutron Music Playerがうまく動作しなかったです。可能なかぎり原因を調べたのですが、解決には至りませんでした。OPUS #3でやった「webブラウザを使ってAmazon APP Storeをインストールする」方法を試すのも億劫だったので今回はNeutron Music Playerではなく標準の音楽再生アプリを使いました。
頑張ればなんとかなると思いますが、OPUS #3を手放したのはAndroidアプリの使い勝手が悪くなってきたのが理由なので、2020年にこの使い勝手は厳しいものがあります。
K100のアルバムメニューです。約500曲をmicroSDカードに保存した状態ですが、アートワークの表示、スクロールはカクつくことなく快適です。ディスプレイも大きいので見やすいですね。
こちらはPlaylistメニューです。m3u形式のプレイリストを自動で読み取ってくれなかったので、いつもの試聴曲を集めたプレイリストを手動で作成しました。こういった動作も快適で、手順もわかりやすかったです。私はよほどのことがないとマニュアルを読まないタイプなんですが、K100についてはまったく不要ですね。
フォルダメニューです。200GBのmicroSDカードもしっかりと認識しています。
メインメニューの一番下にあった「Settings」メニューです。Androidの設定メニューに遷移し、「Wi-Fi」「Bluetooth」といったお馴染みの項目が並びます。
こちらは「Output」メニューです。オーディオに関する出力設定はここで行います。
パソコンと接続した場合のUSBモードはMTPとCharging Only(電源供給のみ)、USB DACの三つから選ぶことができます。USB DACとして使う場合は、K100本体側の操作はできなくなります。
DSPの設定も可能です。32bitがいい感じでしたが、電池の持ちはいまひとつです。
Android アプリ
DAP(デジタルオーディオプレーヤー)はいい音を鳴らすだけでなく、機能的にAndroidアプリを使用できるのが私の必須条件です。音のいいDAPはたくさんありますが、Androidアプリが使えないと私の購入対象にはなりません。
K100ですが、Androidアプリについては基本的にOPUS #3と同じです。まずは以下の記事を参考にしてください。
OPUS #3やK100のようにGoogle Play Storeが使えないAndroidデバイスの場合、Amazon app storeをインストールするのがベストです。APKファイルを直接、K100本体にコピーしてK100にインストールする方法もありますが、アプリの更新とGoogleアカウントを使った権限確認には不向きです。アプリをインストールして使うだけなら問題はないのですが、有償ライセンスの有無を確認する場合、最終的にGoogleのアカウント管理アプリが必要となります。
先述の通り、OPUS #3を購入した頃とは違って、最近はCayin、Shanling、iBasso、HiBy、FiiOとGoogle Play Storeに対応するメーカーが増えてきました。そうなるとK100やOPUS #3のようなアプリの運用は面倒くさいです。私としてもOPUS #3でGoogle Play Storeが使えるのであればもう少し長く使ったと思います。
まとめ
K100はメリットとデメリットがわかりやすいですね。簡潔にまとめていきます。
メリット
- 繊細でナチュラル且つ着色の少ない音質
- バッテリーの交換が容易
- 操作性
私がメリット(良い点)として感じたのはこの三つです。特に良かったのは音質です。ここのところパワーのあるDAPが増えているのはイヤホンよりもヘッドホンを多く使う私には嬉しいことなんですが、音のほうもパワフルで元気なDAPが増えてきました。逆に音の繊細さやアコースティックな音楽に合うナチュラルさが少し欠けてきているように思います。私が愛用しているDX220とN6ii/E01についても同様の傾向にあります。DX220の場合は、AMP9と組み合わせるとOPUS #3に近い音質を得られるので気に入ってます。
バッテリーの交換についてはK100の発売から3年以上が経過しないとなんとも言えないところだと思いますが、チャレンジとしては面白いと思います。
最後の操作性ですが、Kontinum社初のDAPにも関わらず安定しています。私はDAPをAndroidモードで使うことが多いので、DAPごとの使い勝手の善し悪しに影響されないんですが、独自OSだと様々な点で不具合があるのを目にします。OPUSシリーズは比較的ソフトウェアが安定していたと記憶していますが、K100についても同じ印象を受けました。
デメリット
- Google Play Storeが使えない
- Android OSのバージョンが古い
- 価格
- バランス端子が2.5mmのみ
Google Play Store、Android OSのバージョンについてはこれまで書いてきたとおりです。現時点ならばAndroid 7(来年になると8でしょうか)が望ましいですね。
とは言え、Androidアプリを使わない場合は、Google Play StoreとAndroid OSの問題はあまり関係ありません。K100は私のようなAndroidアプリを使うユーザーよりもDAP専用機を好む方に向いてると思います。
最後の価格は単純に他の製品に比べて価格が高めかなと感じてます。現状、K100の173,800円(税込)という価格は私が所有しているN6ii/E01、DX220を超えています。人気の高いFiiOのM15(税込み163,900円)よりも高いです。音の好みは人それぞれですが、製品に対する価値観や価格感も人それぞれです。収入も違えば、オーディオに費やせる金額も異なるのでオーディオ製品に対する価値観や価格感を同じにするのは難しいですけれども、個人的には自分が所有している製品やこれまで試聴してきた製品と比べて高めと感じました。
ただし、K100はKontinum社にとって初めての製品なので、多少割高になるのは仕方がないのかもしれません。
バランス端子はさほど使わないので強くこだわるポイントではありませんが、2.5mmのみというのは今時、厳しいかなと思います。
最後に
良いところも悪いところも含めて書いてきました。
気に入った点はなんと言っても音です。高域と中域の繊細さ、細かさ、滑らかさが好印象です。何度か書いたとおり、音質はOPUS #3とよく似ています。クセがないのも好感です。悪く言ってしまうと線の細い音とも言えるんですが、こういった傾向の音のほうが得意とするジャンルもありますし、一般的には分厚い音で聴いたほうが気持ちのいいメタル系も細い音で聴くと新鮮な聴感を得られたりします。最近はこの傾向の音を追求する製品が少ないと感じてるので、なおさら貴重な存在と思えてきます。
使い勝手については私が購入するタイプの製品ではありませんが、アプリなどは使わず、純粋にDAP(デジタルオーディオプレーヤー)として使う方には向いています。
音の個性とバッテリーの考え方についてはいいと思いますので、個人的には次の製品に期待したいと思います。願わくばGoogle Play StoreとAndroidアプリ対応で、OSバージョンは8以降が望ましいです。
ニッチな市場ながらも唯一無二の個性を発揮していたOPUSシリーズに元気がないのは寂しいかぎりですが、Kontinum社が同じような音を追求するのであれば個人的に注目したいメーカーのひとつになります。
今回は以上です。
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