amahikasです。
春のヘッドホン祭2019に行ってきました。今年は4月27日(土)と4月28日(日)に開催されました。秋は行けなかったのでポタフェスでは聴けない製品もいくつかあって楽しみにしていました。
レポート 1ではCayinの新しいDAP(デジタルオーディオプレーヤー)のN6iiの感想を書いていきます。
試聴環境
本題に入る前に今回のイベントの試聴環境を紹介しておきます。
DAP(デジタルオーディオプレーヤー)はメインで使っているCayin i5を使いました。今回はN6iiという大本命が出ていたので、比較をする上でもなるべくCayin i5の音に耳を慣らすようにしました。Cayin i5はいつも通りLow Gainでエフェクター類は無効にしてあります。
ヘッドホンはメインで使っているDT 1770 PROを使いました。DT 1770 PROにはORBのClear forceといういつもの環境で試聴をしました。
音源は主にCDから取り込んだAppleロスレス(ALAC)です。
たまにHF PlayerでFLACの96kHz/24bitの音源も聴きます。
試聴に使う曲や聴きどころについてはこちらを参考にしてくださいませ。
Cayin N6ii
いよいよ登場ということで非常に楽しみにしているN6iiです。2016年に購入したCayin i5 DAPは今でもメインで使っていますが、買い換えるとしたらN6iiが一番近いかなと思ってます。
N6iiはCayin N6の後継機ですが、Android搭載でGoogle Playも使えるi5の機能も有しています。Wi-FiやBluetooth機能もありますので個人的にはN6とi5の後継機と思っています。
特徴としてはオーディオマザーボードが交換可能になっていところです。これまでFiiOやiBassoでアンプカードが交換可能という製品がありましたが、N6iiはDACだけでなくAMPも交換可能になっています。DACとAMPが搭載されている基板をオーディオマザーボードと呼んでいて、私が聴いたのはAK4497EQとOPA1622が搭載されているA01というオーディオマザーボードです。
中国で先行発売をし、日本では5月末での発売になりそうです。オーディオマザーボードは年内にもうひとつ、来年にもうひとつの発売を予定しているとのことです。
価格はメーカーからは米ドル1,199と発表されいて、コペックジャパンさんによると国内では約15万円になりそうとのことです。個人的には13万くらいになると嬉しいです(笑)
前述の通り、発売当初はオーディオマザーボードはA01が搭載されます。ふたつめのオーディオマザーボードは数ヶ月後に発売される予定です。
正式名称はメーカーが「N6MK2」と「N6ii」の両方を使っているのでどちらになるのか不明ですが、最終的にはいつも通りに「Cayin N6ii DAP」で落ち着くのではないかと予想しています。
Cayin N6iiの仕様
N6iiの仕様について簡単に紹介しておきます。
- MCU:Snapdragon 425
- OS:Customized Android 8.1
- Memory:4GB
- Storage:64GB + microSDカードスロット×1
- Google Play:プリインストール
- Display:4.2インチ 768×1280(IPS)
- USB:Type-C
- Wi-Fi:2.4G/5G
- Bluetooth:V4.2、対応コーデック(SBC、AAC、aptX、LDAC)
- 出力端子:3.5mmと4.4mmバランス(兼ラインアウト)、3.5mmラインアウト
- 重さ:290g
- サイズ:121x70x21mm
- オーディオマザーボード:A01(DAC:AK4497EQ、AMP:OPA1622×4)
スペックは個人的に申し分ないです。最近はHiby社のR6 ProやiBassoのDX220なんかもAndroid型のDAPでGoogle Playも使えるので注目しています。
N6iiの仕様を見るとR6 Proと同じSnapdragon 425というMCUを採用していますが、メモリは4GBです。動画で見るとキビキビ動いてるR6 Proでも3GBです。現在のパソコンやスマートフォンは体感速度はCPUよりもメモリが大きく影響すると思ってるので、4GBはとてもいいと思います。
OSがAndroid 8.1なのもいいですね。現在メインで使ってるCayin i5はAndroid 4.4、OPUS #3はAndroid 5.1をベースとしているので、いつまで最新のアプリを使えるかが不安です。Android 8.1がベースであればかなり長く使えそうです。
ストレージについては内蔵64GB、microSDカード一基搭載というオーソドックスな構成です。私の使い方だと音源はmicroSDカードに保存しますし、microSDカードも400GBが安くなってきたのでこれで十分です。ちなみに現在使ってる200GBのmicroSDカードは使用量が120GBです。iTunesのプレイリストを使ってmicroSDカードには必要な曲しか転送しないようにしてる効果が出ています。
Wi-Fiは5GHzにも対応しているのが心強いです。Wi-Fiはそんなに使わないので2.4GHzだけでも十分ですが、ストリーミングアプリを使う場合は5GHzが使えると快適ですし、あって困るものでもありません。
BluetoothはaptXとLDACに対応です。ここも嬉しいですね。公式にはまだ発表されていませんが、LDACに対応するということはaptX HDにも対応すると思います。
サイズと重量は携帯をするのに少し心配です。Cayini5の195gに対して290gです。サイズはひとまわり大きくなっていて、どちらかというとCayin N8のサイズ感に近いです。
DACはAK4497EQ、AMPはOPA1622×4個です。有名なところだとPLENUE 2、A&ultima SP1000、Lotoo PAW Gold TOUCH、Cayin N8といったDAPに搭載されています。DACだけで音質が決まるわけではありませんが、味つけが濃いめの製品が多いという印象を持っています。
出力端子は3.5mm、4.4mmバランス、3.5mmラインアウトの三つで4.4mmはラインアウトも兼ねています。N8をお借りした時に初めて4.4mmを使いましたが、2.5mmよりも安定感があって安心です。本体のサイズが多少大きくなっても個人的には4.4mmのほうがいいですです。
詳細は以下のURLを参照願います。
なお、前々からもしかしてと思っていたんですが、N6iiの仕様を見て確信しました。多分、HiByのR6シリーズってCayin(Zhuhai Spark Electronic Equipment)がハード面の製造をしてるのではないかと思います。仕様もよく似てるのでソフトのHiby、ハードのCayinとうまく協力をしているのかなと思ってます。
デザインと外観
本体の写真を撮ってきました。
せっかくなのでi5と一緒に撮影しました。サイズがひとまわり大きいというのがわかるかと思います。もっともインパクトがあるのは厚みですね。厚みがあると片手で操作がしづらくなることをCayin N8で経験しています。もう少し薄いほうがありがたいですね。
右側には音量つまみと曲送りなどの操作系ボタンがあります。デザインを最初に見たときはN8やAK240に似てると思いました。
音量つまみはデザインと使い勝手の点でN8に似ています。しかし、ゆるゆるだったN8に比べると少し硬めになっているので誤作動はあまりしないんじゃないかと思います。
上面には左から3.5mmラインアウト、3.5mm、4.4mmバランス端子があります。
左側面はシンプルにmicroSDカードのみです。N5iiSではSDカードスロットがふたつあるためにSpotifyなどのストリーミング系アプリがうまく動作しない問題があって現在も解決できずにいるようです。
Android OSはそもそもふたつのカードスロットを想定してないでしょうから、これは当然といえば当然かもしれません。不要な問題を避けるためにもカードスロットはひとつでいいのではないかと思います。
底面にはN8と同様にI2S端子(Mini-HDMI)とUSB Type-C端子があります。USB Type-CはUSB Audio OutとS/PDIF(Coaxial)としても機能します。
音の感想
次に肝心の音について書いていきます。
試聴をしたのは5分くらいです。N6iiの3.5mm端子にDT 1770 PROを接続して聴きました。N6iiはミドルゲインにしました。i5よりも出力は弱いようですが、i5は強すぎる点もあると感じるのでちょうど良いのではないかと思います。
At The End Of The Day / Les Miserables
音量は91で聴きました。i5だとLow Gainでも70までは上げないので、Middle Gainで91であれば感度の高いイヤホン(IEM)もいい感じに聴くことができると思います。
一聴して感じたのはi5と比べて中域が厚いことです。高域は埋もれることなく鳴っていて冒頭のパーカッションと歓声も聴きとることができます。ただ、音の分離についてはいまひとつです。オーケストラの迫力はしっかりと表現されています。特に低域の表現力が豊かと感じました。スピード感についてはそこそこでした。もっさりとまではいきませんが、キビキビとした音には聞こえなかったです。
帯域のバランスはフラットに近いものの中域が厚いと感じました。傾向としてはウォームで味つけが濃いです。自然というよりもかっちりとした音になっていると感じました。
Rio Rush / Fourplay
この曲も音量は91で聴きました。
上品で落ち着いたというよりも少し元気のある明るい鳴り方です。また、この曲でも中域が厚いと感じました。
高域と低域はi5と比べても過不足なく鳴っているんですが、中域の主張が強いためすっきりというよりも濃いめの音になっています。ピアノやギターの音は魅力的に聞こえるんですが、シンバルやベースがi5で聴くよりも聞き取りづらいです。
もうひとつ気になったのは全体的に耳に近い所で音が鳴ります。音源が持つ奥行きが感じにくくなってるように感じました。
Master of Puppets / Metallica
この曲は音量93で聴きましたが、非常に良かったです。特に迫力が良く表現されてます。
逆に言うと中域が厚いため音源の悪さをうまくカバーしてると感じました。
使い勝手
続いてN6iiの使い勝手について書いていきます。
まずは携帯性です。
私の使い方だと100%近く携帯をして使うので厚みは気になりますね。i5と違ってHiBy Linkが使えるという強みはあるものの片手でサクサクと使うのは難しそうです。
試聴機にはi5に挿してるmicroSDカードを挿しました。読み込みはえらく速かったです。
5分間の試聴ですが、音量も上げてそれなりにぶん回しました。熱はほとんど持たなかったのには驚きました。
タッチパネルの感度や応答速度は非常に良かったです。
普段はi5を使っているのでN5iiを試聴したときもタッチパネルの感度や応答が良くなったと感じましたが、N6iiは別次元です。iPhone XS Maxを使ってる私でも違和感なく使うことができました。とにかく操作性が飛躍的に良くなっています。
短いですが、Cayin社がN6iiの操作性がわかる動画を公開していますので参考にしてくださいませ。
N6iiを起動するとAndroidデバイス(スマートフォン)と同じようなホーム画面が表示されます。i5の場合、Google Playや音楽再生アプリにたどり着くまでに2タップしないといけないのですが、1タップで音楽再生アプリに遷移できるのは便利です。
5分間だったので起動の速度は確認していません。しかしi5は待機状態でもバッテリーをあまり消費しないので電源を切ることはあまりありません。発売当初はOSが安定せず、バッテリーの消費が激しいということもありましたが、ファームウェアの更新を重ねて安定するようになりました。
N6iiも最初はいろんなバグがあると予想されますが、数ヶ月で安定するのではないかと思います。
まとめ
音と使い勝手、デザインや質感という点でかなり良い製品だと思います。特にタッチパネルの操作性は素晴らしいですね。UIは完全にAndroidスマートフォンのようになっていますが、iTunesと同期をするアプリを常用してる私にとっては好都合です。デザインは唯一無二というわけではありませんが、奇をてらったところがなく操作性を重視しているように感じますので好印象です。
心配なのは携帯性と音量つまみです。携帯性については慣れるような気もしますし、HiBy Linkもあるので、カバンの中に入れて操作をすれば問題ないかもしれません。こればっかりは一週間くらい使ってみないとわからないですね。音量つまみについても同様です。ホイールが少し重たいのとひっかかりもあるので、あれなら誤動作はしにくいと思います。
音については第一印象は良くありません。N6は聴いたことがないのですが、N5、i5、N5iiSといったDAP(デジタルオーディオプレーヤー)で感じたCayinらしさが薄まっていると感じています。C5やHA-300、Spark 884Aといったアンプ/DAC製品にもCayinらしさがあり、とても好みです。N6iiはこれらの製品と少し違う傾向の音で私の好みから外れたと感じたのが正直なところです。
具体的に言うと「中域」と「音の近さ」のふたつが好みから外れた原因です。
10代から30代までHeavy Metalを中心に聴いていた頃は中域が厚い音が好みだったのですが、最近はすっきりとしていてフラットに近い音を好むようになっています。N6iiは中域が厚いため、全体的にウォームなのはいいのですが、音の分離と応答速度が悪くなっていると感じました。それと相対的に高域が目立ちづらくなっています。音質的な傾向としては高域だけでなく全体的にカラッとした音というのもCayinらしさと感じています。i5なんかだとカラッとしていて解像力が高くて分離も良いのですが、聴きづらくならないのはCayinが真空管で培った音の先端をうまく丸める音作りではないかと思っています。聴きづらくならないのと同時に滑らかで自然さがうまく演出されています。逆にN6iiはウェットな傾向が強かったため、自然というよりもカッチリとした音になっていました。
次に「音の近さ」ですが、Cayinというと耳から遠いところをベースにした空間作りがうまくて、不要に音場を広げないところが気に入っています。音場が狭い音源は狭く、広い音源は広く聴かせて欲しいのでCayinは私の好みに合うことが多いです。耳との距離があるため、奥行きが出やすいのも気に入ってる点ですね。
N6iiは音が耳の近くで鳴るため、音が目の前に迫ってくるように感じました。音場は音源の録音状態が悪くても広めに聴かせるものの、奥行きはあまり感じられませんでした。
悪い音源は悪く鳴らして欲しいところですが、それなりに聴かせてしまうのも個人的な好みから外れる点です。
長くなりました。結論を書きましょう。
音を聴くまでは発売日に買おうと思っていたくらいスペックやデザイン、操作性(想像上の)が気に入っていましたが、少し様子を見ることにします。今回は試聴時間が短かったので何度か試聴をしてみたいですね。
価格も私にとってはネックです。できるだけ10万以内に収めたいと考えているので15万というと色々と調整しないといけないなと思っています(笑)
幸か不幸かN6iiはオーディオマザーボードが交換可能なので、これから出てくるオーディオマザーボードにも期待したいです。
操作性があまりにも良かったのでi5の音が出るオーディオマザーボードがあればそれで十分と思ったのは内緒です(笑)
N6iiの感想はこんなところです。音については前述の通り、私の好みには合いませんでしたし、個人的にCayinらしさと思ってる要素の影が薄くなっていたので残念でしたが、音が悪いということではありません。むしろN8のディスクリートアンプに近い傾向になっていて一般的には評価されるのではないかと思っています。
今回は以上です。
以下の記事も合わせて参考にしてくださいませ。
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