amahikasです。
MUSIN様からお借りすることができたので、iBasso Audio DX220 MAXの感想を書いていきます。私自身はDX220を愛用して2年目になりますのでDX220 MAXに興味はありましたが、価格とサイズが私の限界を超えているので「すげーなー」と思いながら市場の動向を眺めてました(笑)
DX220 MAX
DX220 MAXは2020年7月4日に日本で発売されました。日本国内では200台の限定生産で、全世界を合わせると999台しか生産されていません。風の噂で部品の調達が難しかったため限定生産にせざるを得なかったと聞きました。価格は税込218,900円ですが、発売後すぐに売り切れてしまったため、現在は新品で購入するのが難しい状態になっています。
DX220 MAXはESS社のES9028Proを二基積んでデュアル構成としています。この構成はDX200およびDX220と同一です。DX200とDX220にも音の違いはあって前に聞き比べの記事を書きました。iBassoとしてはDX220でもES9028Pro×2の構成を最大限に発揮できておらず、もう少し上澄みがあると考えたのでしょう。
DX220と比較をしてDX220 MAXは電源部が大きく強化されています。iBasso社としては初となるデュアル電源システムを採用していてアナログとデジタル、個別に電源供給をしています。ふたつのセクションはそれぞれで独立しており、交わることがないよう絶縁されているとのことです。
DX200とDX220では交換式のアンプモジュールを採用しましたが、DX220 MAXはAMP8をベースに開発された「iBasso Super class Aディスクリートアンプ回路」を搭載していて交換式ではありません。
液晶パネルに5インチFull HD液晶を採用してるのはDX220と同一です。DAP(デジタルオーディオプレーヤー)であれば十分過ぎる大きさと品質だと思います。本体はステンレス製となっていてDX220と比べると高級感が増しています。
MangoOSとAndroid 8.1のデュアルOSとなっているのはDX220と同じ仕様です。使い勝手や音質に応じて使い分けましょう。QC3.0やPD2.0といった急速充電、USB-DAC機能、LDACとaptXに対応したBluetoothといった仕様もDX220と同じです。
ここまで書いてきたようにDX220 MAXはほとんどの仕様がDX220と同じです。よって、DX220 MAXはまったくの新製品というよりは「DX220をさらに大きな筐体に収納して電源とアナログアンプを強化した」と表現したほうが正しいと思います。DX220 MAXが発表されたときに「DX300」や「DX240」という製品名にすれば良いのにという声を散見しました。しかし個人的には、DX220とAMP8をベースにして開発した製品であって一から作り直したわけではないため、DX220 MAXという製品名にしたのではないかと思っています。そう考えるとiBasso社は良心的とさえ思えます。
DX220 MAXのアナログアンプはAMP8がベースになっていますが、AMP8は海外ユーザー(Whitigir氏)が独自にモディファイ(改造)をした「AMP8-EX」がユーザーの間で高い評価を得るという面白い現象が起きました。最終的にはiBasso社自身が限定モデルとして「AMP8 EX」を製造するということになりました。(詳細は以下のURLを参照のこと)
DX220 MAXのアナログアンプはアンプがベースとなっていますので、単純に出力が上がっただけでなくAMP8-EXで行われた改造もフィードバックされているのではないかと思います。メーカーが製造したものにユーザーが手を加えるという話しは聞いたことがありますが、メーカーがユーザーの改造を受け入れて逆に製造してしまうというのはなかなか聞かない話しです。改造をしたユーザーの見識と技術力の高さにも驚きますが、メーカー側の謙虚且つ柔軟な姿勢にも驚きます。AMP8-EXの存在がDX220 MAXを着想する原因になったとは思いませんが、AMP8-EXがiBassoに与えた気づきはDX220 MAXに注入されているのではないでしょうか。
長々と書きましたが、DX220 MAXの詳細については公式サイトを参考にしてください。
試聴環境
音の感想を書く前に試聴した環境について書いておきます。
試聴に使った機器
以下の機器を試聴に使いました。
- DX220 MAX → DT 1770 PRO
- DX220 MAX → DT 1990 PRO
- DX220 MAX → DT 177X GO
DT 1770 PROは音光堂作製のベルデン88760をケーブルとして使っています。DT 1990 PROはORB Clear forceを、DT 177X GOはE4UA作製のベルデン1804Aのケーブルを接続しています。それぞれ個人的にもっとも好きなケーブルと組み合わせています。DT 1770 PROとDT 1990 PROは3.5mmのシングルエンド接続、DT 177X GOは4.4mmバランス接続で聞いています。DX220 MAXの設定ですが、ゲインはHIGH、デジタルフィルターはSlow Roll-Off(Linear)です。イコライザ類はいつも通りすべて無効にしてあります。再生アプリにはNeutron Music Playerを使用しました。念のため、Wi-FiとBluetoothも無効にしました。
Mango OS
なお、この記事内の感想はMango OSで試聴をした感想ではありません。Android OSにNeutron Music Playerをインストールした環境で試聴をした感想となります。
過去にDX220、DX160で「Mango OS」と「Android OS + Neutron Music Player」の聞き比べをしてましたが、Mango OSは音場が広くなり、より気持ち良く、聞きやすい音になります。Android OS + Neutron Music Playerは着色の少ない音でややクール、分析的に聴くのが合う音になります。DX220 MAXでもこの特徴および違いは一緒でした。あくまでも好みの範囲内で性能が大きく変わるとは感じません。
試聴曲
音源は主にCDから取り込んだAppleロスレス(ALAC)です。
試聴に使う曲や聴きどころについてはこちらを参考にしてくださいませ。
音の感想
Golden Faders / Fourplay
高域から低域まで非常に広帯域に鳴らしてくれます。どの帯域も不足感はありませんが、中域がほんの少し厚いです。高域は滑らか且つ音の粒が細かいです。シンバルの金属的な表現もうまいですが何よりも自然で開放的です。低域は量感とキレが共存するタイプです。個人的にはもう少しキレがあってもいいのですが、このバランス感も好きです。低域も高域と同様に自然な鳴り方です。1990だと音の抜けが非常に良くて快適ですね。
DX220と比べると中域と低域が少し控えめです。また、DX220独特のクセや演出がおさえられており、より自然な鳴り方で好感が持てます。
Bisso Baba / Bob James
前の曲と同じ印象です。音場についていうとDX220よりも少し広がった感じはあるんですが、異次元というほどではありません。
At The End Of The Day / Les Miserables
非常にいいですね。アリーナで演奏されている曲なので、会場の広さがよく伝わります。音場の広さだけでなく、繊細さや細かさ、力強さもよく表現されています。金属的な鋭い音もきれいに出てますし、低い弦楽器の音も深さと厚みがあります。
Flesh and The Power It Holds / Death
メタル系も聴いてみましょう。音の密度が高く、情報量が多いこの曲をよくここまで分解するなと呆れます(笑)。解像力はDX220よりも高いですね。ツーバスを間断なく踏み込むパートでも音が連続しているのではなく、独立して聞こえてきます。4分15秒付近からのソロパートは思わず息を飲むくらい生々しいです。ベースもいいんですが、ギターのキレとヒステリックな音は格別です。
細かい点ですが、この曲についてひとつ注文をつけるとすると、少し音が耳に近いという点でしょうか。特に中域ですね。全体的に一歩下がるくらいの位置のほうが陰影がわかりやすくいいかなと思います。
Master of Puppets / Metallica
Deathよりもこの曲のほうがよく合います。スピード感、迫力、暴力的な表現とどれも文句なしです。
Crush / Kelly Sweet
女性ボーカルものを聴いてみました。この曲も問題なしです。DX220に比べると力強い音になりますね。特に各楽器ともアタック音が強くなったり、余韻が残りやすくなるという音楽を楽しく、気持ちよく聴くための要素が強くなります。
Days of Wonder(Original Mix) / M6
トランス系や電子音楽は特によく合うと感じました。高域と低域ともに帯域が広く、全体的に余裕を持って鳴らしています。トランスミュージックに用いられる電子音はたまに鳴らすのが難しい人工的な音があると感じますが、DX220 MAXだと高域も低域も安定して聴かせてくれます。特に低域が良いですね。量感が多いという意味ではなく、安定してます。
Prophecy / Their Dogs were Astronauts
もう少し背景の黒さが出るといいのですが、いい音で鳴らしてくれますね。DX220と比べると各楽器の分離がよくできてますし、ひとつひとつの音が聞き分けやすいです。そうかといって人工的な音になることはなく、自然な音になっているのがDX220 MAXの良いところです。
The Brain Dance / Animal as Leaders
音場が広いとあって雄大な雰囲気がよくて出ています。各楽器の出音の深さもよく表現されていて、録音状態がいい曲はよりよく聞こえますね。
外観
写真で外観を見ていきましょう。
DX220 MAXの左側面です。質感は非常に高く高級感もあります。microSDカードスロットはいつものiBasso仕様です。残念ながらSDカードの出し入れはしづらいです。
DX220 MAX本体下部です。左から、4.4mmラインアウト、4.4バランス、3.5mmシングルエンド、音量ホイールが並びます。コネクタ類はきれいに加工されていて好感です。音量ホイールがこの位置にあるのは珍しいです。ポータブルというより据え置きで使うのが正しいでしょうね。ホイールは若干軽めです。
本体上部です。ちょっと見づらくなってますが、左から電源入力、電源ボタン、USB Type-C、SPDIF端子が並びます。コネクタ類の仕上がりは本体下部と同じようになってますね。デザインや色が統一されているのと、派手すぎず地味すぎないデザインは好きです。
デュアル電源システムはややクセのある仕様となっています。まず一番左の電源入力端子はアナログセクションに電源を供給するのに使用します。デジタルセクションはUSB Type-Cから給電します。アナログセクション用のバッテリーは約二時間で満充電になり、DX220 MAXの画面左上にバッテリーステータスが表示されます。アナログセクション用のバッテリーが切れた場合、本体の操作や一部機能には影響あり ませんが、音声の出力がされなくなるので注意が必要です。デジタルセクション用のバッテリーステータスは画面右上に表示されます。デジタルセクションのバッテリーが空になると電源が入らなくなります。
裏面はDX220と似ていますが、高級感や手触りは段違いで良いです。
本体の右側面は特に何もありません。
標準ケースをつけてみました。標準ケースをつける際にどっちが上なのかわからなかったのですが、microSDカードスロットで合わせるとわかりやすいです。
標準ケースをつけた状態の本体下部です。据え置きで使うならケース無しで使いたいですね。
Cayin N6ii、DX220と並べてみました。DX220が240gなのに対してDX220 MAXは700gです。サイズだけ見ると「外に持ち出してみようかな」と思ったりするのですが、手に持ってみて止めたことが何度かありました(笑)。私が持ち出すにはサイズも重さも限界のようです。
DX220 MAXとDX220の裏面を比べてみました。DX220 MAXのほうが光沢が強いですね。
使い勝手
DAP(デジタルオーディオプレーヤー)の場合、主に外出時の感想を書くのですが、DX220 MAXは外に持ち出さなかったため、室内で使用した感想を書きます。
Android アプリ
N6iiとDX220で常用しているiSyncr、Neutron Music Playerといったアプリを使いましたが、特に問題はなく快適でした。Google Play Storeも問題なく使うことができたので個人的に不満はなく快適に使うことができました。ストリーミング系のアプリはSpotifyを試しましたがこちらも問題ないですね。TwitterのフォロワーさんによるとAmazon Music HDで不具合が出たりしたようです。
いつも書いてることですが、DAPメーカーがAndroidアプリの動作を保証することは非常に難しいので、アプリの動作については保証をする必要が無いと思ってます。ユーザーとしてはDAPメーカーになんとかして欲しいと思うのは自然なことですが、手間がかかりすぎるとAndroidアプリをインストール出来ないようにする可能性もあることを考慮する必要があります。
操作全般
Android端末として快適に使うことができました。iPhone XS MaxやOPPO Find X2 Proほどぬるぬるさくさくではありませんが、DAPとしては問題もないレベルです。
通信
無線LAN(Wi-Fi)とBluetoothを試しました。特に無線LAN(Wi-Fi)はアプリをダウンロードしたり、楽曲ファイルを転送するのに多用しました。小さな問題もなく安定して動いてくれました。
発熱とバッテリー
バッテリーについては外に持ち出さなかったので無評価とします。発熱は意外と少なかったです。もっと発熱するのかなと思ったのですが、体感的には40度もいってないと思います。私の場合、Wi-FiもBluetoothも無効にして聴くことが多かったからかもしれませんね。
まとめ
三週間ほどDX220 MAXを堪能しました。こういった機会を与えていただき、(株)MUSIN様には感謝いたします。
DX220 MAXの音について大ざっぱにまとめると、DX220よりは確実に良くて、Cayin N8には及ばないといったところです。また個人的な好みでいうとCayin N6ii/E01のほうが好きです。
まず、DX220との比較ですが、中域と低域が少し控えめで、DX220のクセや演出がおさえられており、より自然な鳴り方が好印象でした。音場もDX220 MAXのほうが広いです。電源を強化しているので全体的にどっしりとした音になっています。DX220が軽く聞こえるということはないのですが、DX220 MAXのほうがゆとりがあって力強い音を出します。
N6ii/E01との比較だと解像度や音の分離は互角ですが、背景の黒さはN6ii/E01のほうが黒いです。DX220 MAXは音を少し引き伸ばして黒い背景を埋める印象があります。音場はDX220 MAXのほうが左右に広く、奥行きはN6ii/E01のほうが広いです。ナチュラルさと演出の少なさはN6ii/E01のほうが高いです。DX220 MAXはDX220よりもクセがおさえられているもののN6ii/E01に比べるとまだクセがあると感じます。元気さや明るさについてはDX220 MAXのほうが得意ですが、正確に鳴らすことや音源によっては無機質だったり落ち着いた雰囲気で鳴らすのはN6ii/E01がうまいです。
前からiBassoとCayinの音作りは違うと思ってましたが、DX220 MAXを聴いて両社の違いがはっきりとわかりました。特に異なるのは音場の解釈と思います。Cayinは音の空間を広くするので背景も黒くなります。iBassoは空間を広げるため、音を引き伸ばしたように聞こえます。無音の部分が黒ではなく、音で埋められます。結果的に、録音状態の良くない音源であってもDX220やDX220 MAXで聴くとそれなりの音で聞こえますが、Cayinだと音のない部分は無音なので悪く聞こえることが多いです。逆に録音状態のいい音源の場合、Cayinの音作りのほうが陰影がはっきりするのでよりよく聞こえます。具体的にいうと楽器の音色の違いがわかりやすくなり、音の深さや立体感が向上します。ちなみにこの違いは音源が良ければ良いほど違いが出ます。それほど良くない音源の場合はそもそも音色や音の深さ、立体感は音源では表現(録音)されていないので違いはわかりにくく、かえってiBassoのほうがよく聞こえたりします。
DX220 MAXの使い勝手ですが、個人的には携帯をするのは難しいと感じました。サイズはなんとかなっても重さはいかんともしがたいです。
その他、私がいつも使っているAndroidアプリは問題なく動作しました。タッチパネルやWi-Fi、Bluetoothなど、N6iiやDX220で使っている機能も同じように使えました。
DX220 MAXについて書きました。思えばDX220を購入してからDX200、DX160、DX150などiBassoの製品をじっくりと聴いてきました。iBassoは現在、DX300を開発中とのことなので、このDX220 MAXからひとつの製品サイクルが終了するのかなと思っています。これまで聴いてきた製品を思い出すと、私はDX200の音が一番好きだと思います。デバイスとしての完成度を考慮してDX220を選びましたがたまーに後悔することもありますね(笑)
そんなわけでiBassoのDX300を楽しみにしたいと思います。
今回は以上です。
以下の記事も合わせて参考にしてください。
コメント
いつも参考にさせていただいています。
こちらの感想はmango OSでしたでしょうか?もしもandroid OSでのご感想でしたら、mango OSでの再生を試して頂きたかったです。音の厚みが段違いです
通りすがりさん、コメントありがとうございます。
amahikasです。
Mango OSはDX220とDX160で聞き比べをしましたが、Android OS+Neutron Music Playerと比べて好みの違いの範囲と感じています。
「段違い」「全然違う」という評価も見かけますが、私自身はそこまで変わるとは思っていないです。
承知しました。ご感想ありがとうございました!