今年は密閉型ヘッドホンが豊作だったamahikasです。
2019年9月に購入したAKG K275も三ヶ月が経とうとしています。AKGのスタジオモニターも一本は欲しいなという軽い気持ちで購入したのですが、思っていたよりも活躍してくれています。
K275の製品概要や使い勝手についてはファーストインプレッションの記事で書いたので、この記事では主に音質面について書きたいと思います。
AKG K275
K275は海外では2018年に発売されたプロフェッショナル向けスタジオモニターヘッドホンです。同社が誇るロングセラーのK271 MKIIの後継機でいくつかの変更が加えられています。
詳細はファーストインプレッションの記事に書いたのでこちらを参考にしてくださいませ。
視聴環境
K275はもっぱら外で使っています。移動が多くて荷物をコンパクトにしたいときにDT 1770 PROの代わりに持ち出すことが多いです。
バーンイン(エージング)の状況ですが、購入してから200時間以上たっぷり鳴らしました。今のところ、50時間も鳴らせば十分かなと思います。
音
聞き比べ環境
AKG K275とDT 1770 PROのケーブルはそれぞれORBのClear forceをつけました。イヤーパッドはそれぞれの標準合皮パッドをつけています。再生はいつもの聞き比べ環境です。MacBook Proにインストールしている再生アプリのAudirvana 3.5.29で2020年1月13日時点の最新バージョンです。iTunes Integrated ModeではなくAudirvana単体で使っています。
ヘッドフォンDAC/AMPはGrace Design m9XXを使います。MacBook ProとはUSB接続しています。
音源はいつも通りの試聴曲を使います。主にCDから取り込んだAppleロスレス(ALAC)です。iTunesと同じミュージックライブラリをAudirvanaに読み込ませています。
試聴に使う曲や聴きどころについてはこちらを参考にしてくださいませ。
K275とDT 1770 PROの聞き比べ
それではK275と1770の聞き比べをしていきます。どの曲でもK275で聴いた印象を書いてから、1770との聞き比べ結果を書きます。
Golden Faders / Fourplay
まずはK275です。シンバル音は滑らかで密閉型にしては開放的な高域を聴かせてくれます。帯域バランスはやや低域寄りですが、低音ヘッドホンと分類するほど低音が支配的ではありません。どの帯域も過不足なく出ていてバランスは非常にいいです。楽しく元気に聞かせるというよりも落ち着いた音で音源に対して素直と感じます。味つけももちろん少なくて自然な鳴り方が特徴的です。私がイメージするAKGらしい音ですね。
1770と比べると全体的に解像力が劣ります。1770のほうがひとつひとつの音を細かく聞き分けることができて分離も良いです。音場も1770のほうが広いです。音源にもよりますが、この曲の持つ音場の広さは1770のほうがしっかりと表現してくれます。帯域レンジも1770のほうが広いです。高域は開放的で低域も下までよく出ます。
Bisso Baba / Bob James
派手さはありませんが、この曲でも堅実に鳴らすなぁという印象です。1770と比べると低域がもう少し下まで出て欲しいと思いますが、価格を考えると十分です。帯域レンジが狭いとは感じません。この曲では高域のシンバルとアコギの音はK275のほうが自然に聞こえました。1770はやや強調している感じがあります。K275は高域の量感が1770よりも控えめなのでこのように聞こえるようです。
低域については先ほどの曲と一緒で、1770のほうが下までよく出ていますが、量感はK275のほうが上です。
At The End Of The Day / Les Miserables
冒頭のパーカッションと歓声は良い具合に鳴らしてくれます。オーケストラの各楽器の分離も良いですし、スピード感もあります。音場についてもそこそこ表現できていますが、1770と比べてしまうと狭いと感じます。
この曲ではK275と1770の差がよりわかりやすかったです。各楽器の分離、スピード感、帯域レンジの広さは1770を100とするとK275は90くらいです。
Flesh and The Power It Holds / Death
この曲も差がわかりやすいですね。K275は高域の開放感が物足りないです。中域はK275のほうが量感があって迫力がよく出ています。各楽器の分離とスピード感は前の曲と同じく1770が勝っています。
この手の情報量が多い曲だと1770の優秀さが際立ちますね。
Master of Puppets / Metallica
この曲も前のDeathと同じ感想です。K275だけを使っている分には気になりませんが、聞き比べると結構差があります。特に高域と各楽器の分離、解像力ですね。しかし中域の厚みについてはK275のほうが上で、リフをギターとベースがユニゾンで弾くところはK275のほうが迫力は出ています。
Crush / Kelly Sweet
この曲も高域の開放感で差を感じます。K275だとアコギの音も少し弱いです。各楽器の分離も甘めなので見晴らしの良さは1770に及びません。ただ、ボーカルのサ行の刺さりも聞こえないのでK275は全体的に聴きやすいです。逆に高域の量感が多く、各楽器の分離の良い1770は刺激的な音にも聞こえます。音質的にはよく似ている両製品ですが、K275のほうがホッとする聴かせ方をしますね。
音に関する総評
この後に他の試聴曲の「Rangers / A Fine Frenzy」「Days of Wonder(Original Mix) / M6」「GBFISYSIH / GoGo Penguin」「Prophecy / Their Dogs were Astronauts」を聴きましたが、同じような感想だったので詳細は割愛します。
寒色系ながらも自然で上流に対して素直な点は1770と音質傾向が似ています。もっとも違うと感じるのは高域の量感で、1770のほうが刺激的で開放的です。ただし、K275の高域が物足りないということもなくどちらかというと1770のほうが出すぎなのかもしれません。そう感じるくらいK275の高域は素直で聴きやすいです。
解像力や情報量の多さ、縦のレンジの広さと音場の広さ、開放感と音の抜けなどの基本性能では1770のほうが全体的に優れていて価格の差を感じますが、K275のほうが聴きやすいというメリットもあります。高域の量感の違いだけで聴きやすさが高も変わるのかというくらい違いが出ます。私にとっては1770のほうが好みですが人によってはK275のほうが好きという意見があっても驚きません。
デザインと質感
ファーストインプレッションの記事に写真を掲載しましたので参考にしていただければと思います。
K275はスタジオモニターなので高級感だったり、魅了されるようなデザインというタイプの製品ではありませんが、長く使うために重要な頑丈さや快適性は備えています。
音漏れと遮音性
遮音性については1770よりも優秀で、音漏れについては1770と同等です。
イヤーカップでしっかりと耳を覆わないと音が漏れるので注意が必要です。
装着感と側圧
装着感は1770よりも軽くて良いです。MEZEの99 Classicsと同等ですね。側圧は意外と緩めなので圧迫感は少ないです。1770と比べると長時間の装着も気になりません。
音量(鳴らしやすさ)
音量はK275が71から75、1770が80から83でした。K275はiPhone XS Maxに直接接続してもちゃんと鳴らせるので出力の弱い製品とも組み合わせやすいです。
まとめ
これまでは漠然と1770と音質が似ているのでK275を使ってきましたが、改めて聞き比べてみるとそれなりに差があることがわかりました。とは言え、普段使っていて気になるかというとそうでもなくて1770とうまく併用しています。
価格差もあるので性能に差については容易に割り切ることができるくらい音質傾向が似ているのでK275は違和感なく使っています。99 Classicsの場合は、1770と音質傾向が違うのでワンポイントリリーフとして使うことはできるのですが、連続して使うには不向きです。性能は99 Classicsのほうが上ですが、K275のほうが1770と併用するのに適しています。
音質以外の点でいうと、K275の軽さ、携帯性の良さは重宝しています。一般的に1770を外で使うのはかなり異質と自覚していますので(笑)、K275のほうが一般にも受けいられやすいと思います。実際、1770のほうが髪の毛のクセがつきやすいですし、メガネ(老眼鏡)との併用もしづらいです。
最後になりますが、AKGからK371という密閉型のヘッドホンが発売されました。K371も折りたたみができるのでK275と同じような感覚で使うことができます。友人が所有しているK371を聴きましたが、K275よりも中域と低域に力強さがあるという印象でした。
うっかり買いそうになってしまうんですが、私はK275とK371の上位機種を待つこととします。
今回は以上です。
以下の記事も参考にしてください。
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