amahikasです。
先日、店頭試聴をして気に入ったIE 400 PROですが、ちょっと我慢ならなかったので(笑)、メーカーから試聴機をお借りしてじっくり聴くことにしました。せっかくなのでIE 500 PROも一緒に借りたので、聞き比べもしたいと思います。
Sennheiser IE 400 PRO
日本国内では2019年7月に発売されたモニタリングイヤホンです。7mm径のダイナミック型ドライバーを一基搭載し、先に発売されているIE 40 PROと同じく独自仕様のコネクタを採用しています。リケーブルは可能ですが、MMCXや2Pinに比べると選択肢が非常に少ないです。IE 400 PROとIE 500 PROのコネクタは互換性がありますが、IE 40 PROは互換性がありません。また、IE 400 PROはIE 500 PROでは付属ケーブルが異なっていてIE 400 PROは黒のストレートケーブル、IE 500 PROはシルバーのツイストケーブルが付属します。イヤーピースはシリコンタイプとフォームタイプが付属します。サイズは S/M/Lなので合計で6ペアです。本体のノズルにも耳垢ガードがついてるのですが、イヤーピースにも耳垢ガードがついてます。
本体色は両方ともクリアとスモーキーブラックから選ぶことができます。価格は35,000円前後です。
詳細は公式サイトを参考にしてくださいませ。
ゼンハイザーはこれまで数多くの製品を試聴してきました。しかしHD 800 SやHD 820など気に入った製品に限って予算外ということが多いです(笑)
逆にヘッドホンのMOMENTUMやHD 660 S、イヤホンのIE 800 Sなどは好みに合いませんでした。ゼンハイザーと私の好みはなかなか合わないなと思っていたところにIE 40 PROとIE 400 PROを聴いて気に入ったのでオーディオは面白いなと感じます。
試聴環境
試聴にはメインで使っているDAP(デジタルオーディオプレーヤー)のCayinのN6ii/E01とiBassoのDX220(AMP1 MKII)を使いました。両方ともゲインはMiddleで再生アプリはNeutron Music Playerで設定は同じにしてあります。イコライザー類はすべて無効です。
IE 400 PROは主に通勤や職場にいるときに使いました。
聞き比べの際には据え置きのDAC兼ヘッドホンアンプのm9XXを使いました。
バーンイン(エイジング)の状況ですが、箱から出した状態だと低域の量感がかなり強くてボワつくくらいでした。30時間ほど鳴らしたら低域に締まりが出てきて量感も落ち着きました。この記事は100時間鳴らした後に感想を書いてますが、最低でも30時間は鳴らすことをお薦めします。箱から出したままの音であったら私の感想はあまり良くないものになっていたでしょう。それくらい変わります。
試聴に使う音源はいつもと同じ曲です。
主にCDから取り込んだAppleロスレス(ALAC)で、試聴に使う曲や聴きどころについてはこちらを参考にしてくださいませ。
試聴結果
Bisso Baba / Bob James
相変わらず中域から低域にかけてしっかりと量感がある印象です。箱から出したままの状態だと少しボワついてこもりを感じるくらいなんですがバーンイン(エイジング)後は質も良くなってキレが出てきてそれぞれの音の輪郭がはっきりと浮かび上がります。高域の量感と開放的な鳴り方も十分で、あくまでも自然なのが好印象です。全体的なバランスは中低域寄りですが、高域が決しておろそかになっておらず、しっかりと主張しているのがIE 400 PROで気に入っている点です。音場は音源に対して素直で広くもなく狭くもないです。
Golden Faders / Fourplay
冒頭のシンバル音が非常に滑らかです。下で鳴るベースラインもキレがあっていいです。この曲の音源の広さやゆったりとした雰囲気もよく表現できています。どの帯域も音の抜けがいいのも特徴ですね。縦の帯域も広く、天井の低さや底の浅さも感じさせません。これといった特徴やクセはありませんが、音源に素直でナチュラルな音を出し、基本性能が高いと感じます。
Flesh and The Power It Holds / Death
この手の情報量の多い曲も難なく鳴らすのは好印象です。中域と低域に量感があってもスピード感がしっかりと表現できているのは質が良いからだと思います。すなわち、メタルのスピード感と迫力、暴力性がいいバランスで表現できています。メタル系の音楽とは特に相性が良いですね。
Master of Puppets / Metallica
店頭試聴時に思わず感心してしまったのがこの曲です。ナチュラルな表現が得意なのでレコード時代の音源とも相性が良いです。解像力を高くしようと無理をしないのでナチュラルさが保たれてるのかなと思います。ギターのクリーントーンもリフのディストーションもきれいに鳴らしてくれます。中域と低域に量感があるので、2本のギターとベースがユニゾンをした時の倍音も気持ちがいいです。
At The End Of The Day / Les Miserables
店頭で聴いたときに感じたのと同じく、会場の広さを表現できてますし、各楽器の聞き分けもしやすいです。特に低い音を担当する楽器の聞き分けがしやすいです。他のイヤホン(IEM)ではなかなか味わえない分離感ですね。
音の余韻の残り方もさることながらスパッと消える音は消えていくのが気持ちがいいです。余韻だけでなくスピード感をうまく演出できています。楽器の数が多いオーケストラには合うという印象です。
Crush / Kelly Sweet
音源の狙い通りにボーカルが前に出てきます。しかしながらバックで流れるアコギが繊細ですし、ベースもゆったりと包み込むように鳴りながらキレもあります。この曲ではベーシストが弦を弾く音もちゃんと確認できました。ここまで細かく確認できるイヤホン(IEM)はあまりありません。なお、ボーカルのサ行は刺さるところもありますが、これも音源通りですね。
Rock the Blues Away / AC/DC
この曲は文句なしです。AC/DCのわりには音の分離が良いので70年代や80年代の音源のほうが個人的にはしっくりときますが、ハードロック、メタルといった音楽にもよく合います。
デザインと外観
相変わらず撮影の腕前が上達しなくて申し訳ないのですが、写真で見ていきましょう。
IE 400 PRO本体です。小さくて軽いのが良い点ですが、デザインは至って普通です。最近の製品はハウジングの素材や見た目にこだわった製品も多いので地味に見えますが、個人的には音や装着感を優先するので気にはなりません。むしろ見た目が良くても音や装着感が悪かったりするともっと本質的な部分にこだわって欲しいと感じることがあります。
本体とケーブルです。
ケーブルのY字分岐とプラグです。こちらも至って普通ですね。
こちらは外箱になります。小さくてシンプルなのは良いのですが少し開けづらいです。
箱を開けるとこのようになっています。マニュアル、保証書、イヤホンケース、3.5→6.3mm変換アダプタ、クリーニングツール、イヤーピースが同梱されています。
こちらは付属ケースです。
SpinFit CP145(Sサイズ)をつけて撮影しました。
スモーキーブラックのIE 500 PROと撮影しました。ケーブルでも見分けることはできますが、本体は見た目だけではほぼ判別不能なのでIE 400 PROとIE 500 PROの本体カラーを分けてもらって良かったです。
こちらはコネクタ部となります。取り外しは比較的簡単で少し力を入れて抜くだけです。
イヤーピース
イヤーピースも撮影しました。上がシリコンタイプのLサイズで、下がフォームタイプのLサイズです。
付属イヤーピースのシリコンタイプは私が実用しても問題のないレベルでした。耳垢ガードもついてますし安心感があります。試聴の際は使い慣れているSpinFitのCP145やオルトフォン、JVCのSpiral Dot++、acoustuneの AET07も試しました。どのイヤーピースでも装着感、遮音性は問題ありませんでした。音の面でいうと標準がもっとも好みです。Spiral Dot++は低域の量感が増えてキレがなくなります。AET07も低域の量感が増しますが、こちらは全体的に整った音になり、ナチュラルさが少し欠けます。IE 400 PROはナチュラルさに魅力を感じているので相性が良くないですね。SpinFitはナチュラルさを残したまま低域がやや増すという印象です。オルトフォンは標準イヤーピースに最も近い音を出してくれますが、イヤーピースが抜けやすいです。
ともかくどのようなイヤーピースでも合わせやすく、快適な装着感と遮音性が得られるのはありがたいです。好みに応じてユーザー側で選ぶのが良いでしょう。
私は標準イヤーピースかSpinfitを使うことが多かったです。購入をしたら標準を使うと思います。標準のイヤーピースが使い慣れたSpinFitやオルトフォンよりも良いと感じるのは久しぶりですね。さすがに老舗メーカーと感心しました。
音漏れと遮音性
店頭試聴の時と同じで遮音性は優秀です。電車の中だとさすがに音が入ってきますのでカスタムIEM(インイヤーモニター)ほどの遮音性ではありませんが、私が所有しているWestone 4RやPinnacle P1レベルにあって、N5005よりも快適です。
音漏れは自宅で妻に確認をしてもらいましたが、普段私が聴くよりも大きめの音量にしても漏れていませんでした。
装着感
歩きながらという状態であっても良好でした。個人的にこれまで使ってきたイヤホンの中で装着感がもっともいいのはWestone 4RとSHURE SE215なんですが、IE 400 PROは同じレベルにあります。
音量
音量ですが、試聴時にはN6ii/E01だと56から68、DX220+AMP1 MKIIだと105-116で聴きました。通常の使用ではもう少し低めで聴いています。
ケーブル
IE 400 PROとIE 500 PROについてデメリットを挙げるならケーブル周りです。コネクタが専用となっていてMMCX、2Pinといった規格のコネクタと互換性はありません。標準ケーブルで十分にいい音を出してますので無理にリケーブルをする必要はありませんが、ポータブルオーディオ好きとしてはいろんなケーブルと組み合わせる楽しみも味わいたいものです。
IE 400 PROに付属するケーブルは黒い皮膜の標準的なケーブルです。細めのケーブルでタッチノイズはありません。スライダーなども洒落っ気はありませんが、堅実なケーブルで好感が持てます。個人的にはコネクタがMMCXなら言うこと無しでした。(しつこい)
ちなみにIE 500 PROに付属するケーブルはシルバーのツイストケーブルとなっていてIE 400 PROと差別化を図っています。
耳周りには針金が入っている仕様なので、自分の耳に合うように曲げてやると快適になります。デフォルトの状態だと耳にひっかけづらいので注意が必要です。
DAPの比較
MacBook Pro+Grace m9XX、Cayin N6ii/E01、DX220+AMP9、DX220+AMP1 MKIIといろんな環境で試聴をしました。
N6ii/E01→m9XX→DX220+AMP9→DX220+AMP1 MKIIの順番で好みでした。IE 400 PROはナチュラルでクセがないのが最大の魅力と感じていますので、DX220で聴くとDX220のクセが乗ります。具体的にいうと少し整った音になってしまいナチュラルさが少し損なわれます。どんな製品とも組み合わせやすいのもIE 400 PROの特徴だと思いますので、DX220との相性が悪いということではなく、小さな差によって私の好みが変わるというだけの話しです。
まとめ
ゼンハイザー社の人気シリーズであるIE 80 SやIE 800 Sをベースに高域の量感と解像力を強化したモデルという印象を受けました。音、遮音性、音漏れは申し分ないです。ここ数年に聴いたイヤホンやIEM(インイヤーモニター)と比べてもかなり気に入りました。音についていうと「ナチュラル」「低域も高域もレンジが広い」「クセがなくて素直」「万能型でどんな製品やジャンルとも相性が良い」「価格」という点が気に入っています。メインで使っているヘッドホンのDT 1770 PROとDT 1990 PROに感じている魅力とほぼ一緒です。ただし、1770や1990と同じような音の傾向かというとそうでもなくて、IE 400 PROは1770と1990ほどドライな音ではなくニュートラルです。ウォーム過ぎなわけではないので私が苦手な傾向にはならない絶妙なバランスと感じます。音のバランスにも違いがあって1770と1990はフラットに近くてIE 400 PROは中低域寄りです。人によっては1770と1990が高域寄りで、IE 400 PROがフラットに近いと感じるかもしれませんね。中低域寄りの製品は私の好みに合わないことが多いのですが、IE 400 PROは高域もしっかりと出ているので好みの範囲内です。
最後の「価格」ですが、IE 40 PROが12,000円前後にも驚きますが、IE 400 PROが35,000円前後にも驚きます。私がメインで使っている10万円前後のAKG N5005にもひけをとりませんし、これまで聴いてきた10万円オーバーの製品と比べても質が劣ることはないです。
いまひとつと思う点は「専用コネクタ」です。私は積極的にリケーブルをするよりも標準ケーブルで気に入ったらそのまま標準ケーブルを使うことが多いのですが、IE 800 Sで採用されているY字分岐からケーブルを交換するタイプか、IE 80 Sの2Pinと互換性を持たせて欲しかったと思います。
見た目も同価格帯の製品に比べると地味ですが、個人的に見た目は重要度が低いので気になりません。むしろ見た目や質感を向上することに予算を費やし、結果的に製品の価格が高くなってしまう製品に対して本末転倒だなと感じるので、IE 400 PROの割り切ったデザインは好印象です。
今回は以上です。次にIE 500 PROのレビューをした後に聞き比べもしたいと思います。
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コメント
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