じっくりと試聴 Cayin 真空管ヘッドホンアンプ HA-300

アンプ
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だいぶ涼しくなってきて過ごしやすくなりました。ヘッドホンの出番も増えてホクホクのamahikasです。
さて、今回はコペックジャパン様の厚意によりCayin社の真空管ヘッドホンアンプ HA-300をお借りすることができました。HA-300は日本国内での価格はまだ発表されていないと記憶していますが、海外では$3,999で販売されているため、私ではまず手が出ないなと思っています。しかし、先日のポタフェス2018でCayin社のN8というDAP(デジタルオーディオプレーヤー)を試聴したときにHA-300もちょっとヘッドホンで聴いたんですが、音の良さに感動しました。
真空管アンプは前から欲しいと思っていて、トライオード社のRubyやLuminous 84、TRV-35SE、TRV-88SERあたりを聴きました。構成はDAPをラインアウトでアンプに接続し、スピーカーから音を出すという私の日常的な使い方と一緒です。スピーカーは私が自宅で使用しているものではないので厳密に同じ環境での試聴とはいかないのですが、RubyとLuminous 84はいまひとつだったものの、TRV-35SEとTRV-88SERは好印象でした。TRV-35SEとTRV-88SERとなると10万円を超えてくる製品なのでどうしたものかと思い悩んでる間にHA-300と出会ったというわけです。

HA-300を気に入ったからと言って、「じゃあ買いましょう」とはいかない価格なんですが、ポータブル環境も落ち着いてますし、死ぬまでHA-300を使い続ける覚悟で買うのもいいかなと思って試聴をすることにしました。ちょっと大げさですが、HA-300を買うとなったら本気で一生使い続けるつもりです。これくらいの覚悟がないと家庭内稟議も通りませんしね(笑)
前置きが長くなりましたが、自宅で二週間ほどじっくりと聴きましたので感想を書きたいと思います。

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Cayin HA-300

Cayin社については今さら説明をするまでもないと思いますが、中国のオーディオメーカーです。私はメインで使っているDAP(デジタルオーディオプレーヤー)からの付き合いですが、DAPよりも真空管アンプメーカーとしての歴史がが長く、真面目に高音質を追求しているメーカーという印象を持っています。価格も比較的安価で音の好みが私に合っています。

HA-300はこれから国内発売されるヘッドホンアンプで、Cayin社の創立25周年を記念して作られたフラグシップモデルです。N8というDAP(デジタルオーディオプレーヤー)も年内に発売予定ですが、こちらも25周年を記念していて、価格を考えずに高音質を追求したモデルがHA-300とN8になります。

HA-300は電源部と本体を分離した据え置き型の真空管ヘッドホンアンプです。スピーカー端子も付属していて、私はここに魅力を感じています。
電源部には整流管としてNOS RCA 22DE4が4本、パワー管には300Bが2本、電圧増幅管としてWE6SN7のレプリカを2本搭載しています。
電源部と本体は専用の電源ケーブルで接続するようになっており、業務用の機材を思わせます。

入力はXLRバランス端子とRCA端子の二系統で、出力は6.3mmのヘッドホン端子と4pinXLRのバランス端子、スピーカー端子を装備しています。ヘッドホン端子はLOW(8〜64Ω)、MIDDLE(65〜250Ω)、HIGH(251〜600Ω)の三段階から出力の大きさを選ぶことができます。ちなみにヘッドホン端子とスピーカー端子は排他仕様となっていて、スイッチで切り替えるようになっています。同時に両方の端子から音を出すことはできません。

HA-300の詳細については公式サイトを参考にしてください。(英語です)

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試聴環境

これだけ高価な製品ですので、通常なら立派なプレーヤーやDACを用意したいところですが、我が家にはHA-300に見合う機材が今のところありません。よって、購入をするとしたらこう使うだろうなという環境で試聴をしました。

スピーカーで聴くときはCayin i5 DAP → HA-300 → DALI MENUET MRM-CR611 → HA-300 → DALI MENUET MR という環境をメインに聴きました。Cayin i5 DAPはたまにもうひとつメインで使っているDAPのOPUS #3に替えたりしています。
ヘッドホンには主にDT 1990 PROを使いました。たまにDT 1770 PROも使いました。再生機は先ほどと一緒でCayin i5 DAPかOPUS#3を使っています。

音源は主にCDから取り込んだAppleロスレス(ALAC)を使っています。
試聴に使う曲や聴きどころについてはこちらを参考にしてくださいませ。

オーディオの試聴によく使う曲と聴きどころ(2017年2月版)
amahikasです。 昨年のうちに更新しておきたかったのですが、インフルエンザにかかってしまって更新ができませんでした。 今回は私がオーディオの試聴に使う曲をと聴きどころを紹介します。 ちなみに前回の更新は2015年10月でした。 昔はH...

音の感想(スピーカー編)

まずはスピーカーで聴いたときの感想ですが、比較対象は普段使っているM-CR611となります。比較をするには価格帯が違いすぎる製品ではありますが、M-CR611しかないので仕方がないです。

Bisso Baba / Bob James

一聴して好みの音だとわかりました。Cayin i5からのラインアウトでも違和感なく音が出てきます。音の傾向は先日聴いたN8 DAPとDT 1770 PROやi5とDT 1990 PROの音と似ています。寒色系で解像力が高く、モニター系の音ですが、ほんのりと温もりもあって聴きやすい音です。上品で落ち着いた鳴り方をするのと全体的に非常に滑らかです。

高域は過不足なく滑らか且つ柔らかい音が出ています。ちょっと驚いたのが低域です。量感が多いというよりも低いところまでよく出ていてスピーカーのDALI MENUETのポテンシャルがさらに引き出されていると感じます。どの帯域が目立つというのは特になくて、フラットに近いです。
各楽器はタイトでキレもあるんですが、この曲が持つゆったりとした雰囲気が良く表現されています。

Rio Rush / Fourplay

この曲も気持ちがいいですね。どちらかというと各楽器のキレが目立ちます。特にドラムのスネアの抜けが気持ちいいです。
この曲ではギターの音色が良いなと思いました。音の響き方も少し上品になりますね。
地を這うようなベース音もよく表現されていますが、決して量感が多いという印象はありません。低いところまでよく出ていますが、どちらかというとキレのほうが目立ちます。

Flesh and The Power It Holds / Death

ギターリフの歪みが非常に良く表現されています。うまいギタリストがいいギターとアンプで弾くのをアンプから直接聴いてるような音が出ています。オーディオ製品でここまで生々しいギターリフを聴くのは初めてかもしれません。ギターについてはクリーントーンもきれいで良いですね。全体的にエレキギターの音は非常にいいです。

曲のほうはどうかというと、少し上品すぎるという気もしますが、デスメタルの迫力と暴力的な音の波はよく表現できています。ライブハウスで聴いてるというよりもスタジオで聴いてるという音ですね。

音の密度が低い中間部ではベースの音が印象的でした。こちらもスタジオで生で聴いてるような音が出ています。
それとこれだけの音の密度なのにシンバルの音なんかもちゃんと聞こえてきますね。質も非常にいいです。

Master of Puppets / Metallica

この曲もギターリフの音が良いなぁと感じました。ギターソロでのクリーントーンもきれいで、ピッキングをしている音までよく出ています。音の立ち上がりも良くて反応が良いなと感じます。

全体的には湿った音ではなく乾いた音の印象が強いです。シンバルの破裂音なんかがきれいに表現されてると感じます。また、これまでの三曲に比べると低音はあまり出ていません。ギターとベースがユニゾンでリフを弾く部分で倍音がほどよく出る程度で、これは音源通りと感じます。無理に出そうとしていないのは好感です。

At The End Of The Day / Les Miserables

ちょっと驚いたのはこの曲です。さっきまで聴いて他曲に比べると一気にアリーナに連れて行かれたように感じました。音量の大きなパートと小さなパートの表現力も高いと感じました。特に静かなパートでは背景が真っ黒になりますね。Cayin N8 DAPを聴いたとき以上です。

この曲で特に良かったのは、コーラスを含む各楽器の音の分離です。コーラスは女性が目立つのですが、男性の声が出ているのもよくわかります。ここまで男性の声もちゃんと聞かせてくれたのは初めてかもしれませんね。

Rangers / A Fine Frenzy

こういう曲にも合いますね。女性ボーカルが生き生きと歌っているように感じます。楽器はシンバルの歯切れが良いです。ベース音は量感よりもキレが目立つので、地を這ったり包み込んだりという要素は少し薄いです。

Crush / Kelly Sweet

こちらの女性ボーカルは瑞々しさがあります。前の曲はカラッと乾いた声に聞こえたので音源の特徴をよく捉えてると思います。ボーカルとベースも良いのですが、アコギの音と響き方が特にいいです。
この曲でも静かなパートと音が大きいパートの表現力が高いと感じました。ただし、付帯音が消されてるということはないのであくまでも自然な音になっています。

Last Train Home / Pat Metheny Group

シンバル音とベース音が歯切れよくて良いですね。うまく共存しています。その上でゆったりと鳴るギターも雄大な雰囲気をうまく出しています。
この曲では控えめになっているピアノの音がいいと感じました。再現度が高いです。

Unspeakable World / GoGo Penguin

ウッドベースの響き方が良いです。ベースがリズムをテンポ良く聴かせたり、ゆったりと聴かせたりとうまく変えてるのもよくわかります。ピアノについても残響音を切ってるところと伸ばしてるところの差がわかりやすいです。

スピーカーで聴くHA-300

いつもの試聴曲以外にもHA-300で自分が好きな曲を聴いた感想を書いていきます。
大まかにまとめると以下のようになります。

  • Cayin社らしい音
  • ジャンルを選ばない
  • エレキギターの音が良い
  • 音の分離が非常に良く、上品で滑らか
  • 小さな音と大きな音の表現がうまい(SN比が高い)

まず、これまで聴いてきたCayin社のDAPやポータブルDAC/アンプと同じ傾向の音でした。音の分離が良くて解像力も高い割に、少しウォームで聴きやすい音ですね。
ただし、これまで私が聴いてきた世界から比べると格段にレベルアップした音と感じました。N8 DAPを聴いたときも同じように感じましたが、それ以上ですね。
元々、Cayin社はスピーカー用の真空管アンプメーカーとして実績を築いていますのでむしろこっちの音のほうが本物なんだろうなと思いました。またHA-300はCayin社の創立25周年を記念して開発されたアンプなので、私がこれくらい衝撃を受けて感動してしまうのも当たり前なんでしょうね。

ジャンルを選ばないのもCayin社の製品に共通する特徴かと思います。とは言え、i5 DAPと比べると特にオーケストラが得意と感じました。逆にメタリカのようなジャンルでは音の厚みを表現するのにもう少し中域が厚くてもいいかなと感じました。

エレキギターの音が全般的に良かったのも好印象です。ここまで生々しくエレキの音を聴いたのはGRADOの開放型ヘッドホンで聴いたときでしょうかね。ALOのDual Continental Monoでも同じような体験をしました。
リフも良かったですし、クリアトーンもきれいでした。先ほど「生々しい」と書きましたが正確にいうと20畳くらいのスタジオでアンプからの音を直接聴いた音に似てると感じました。昔、よく音楽スタジオに出入りしていた頃に、Mesa/Boogieというギターアンプメーカーのヘッドアンプを使っている友人がいて、そのギタリストの友人が出す音が好きでした。おそらく私の耳にその音が焼き付いてるんだと思いますが、HA-300のギターの音が気に入ったのはそういう理由なのかなと自分の音楽人生を振り返りながら聴いてました。

全体的に音の分離が良く、上品で滑らかな音を出すのも好印象でした。よく私がいい音を聴いたときに使う表現ですが、今回は明らかに別の次元でした。

最後の「小さな音と大きな音の表現がうまい」という点ですが、単純にSN比が高いというスペック上のことではなく、出音ではっきりとわかるレベルでした。結果的に、音源に収録されている音楽をより忠実且つ正確に再現してると感じました。特に残響音が切れたり残ったりする違いがはっきりするのと、奥行きが出て音楽らしさも増すという印象です。

音の感想(ヘッドホン編)

前述の通り、ヘッドホンにはDT 1990 PRODT 1770 PROを使いました。
ヘッドホンのほうがスピーカーよりも細かく違いを感じ取ることができるかなと思っていたんですが、意外とスピーカーのほうが違いが大きかったです。ヘッドホンの場合、比較対象がメインで使っている据え置きヘッドホン用DAC/AMPのm9XXだからだと思います。m9XXも改めていい製品なんだなと感じました。
とは言え、HA-300のほうが良かったのは事実で、先日DAPのCayin N8を聴いたときと同じ音の傾向でした。ただし、N8のディスクリートモードの音を思い浮かべながらHA-300を聴いたので、HA-300のほうが柔らかくて付帯音のある音と感じました。N8のディスクリートモードのほうがクリアで整った音でした。

なお、スピーカーで聴く分にはそれほど気にならなかったのですが、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)をOPUS#3にした場合、1990は高音が強くなりすぎました。1770だと問題ないです。HA-300をヘッドホンで聞く場合、Cayin i5のほうが合ってました。

音の感想(M-CR611編)

個人的に気になっていたので、M-CR611のラインアウトからHA-300に接続してスピーカーから聴くという構成も試してみました。この構成がうまくいくと、HA-300を購入したとしてもM-CR611をネットワークレシーバーとして活用できます。

結果はNGでした。M-CR611のラインアウトはおそらくアンプを通ってるようで、全体的にもわっとした音になりました。焦点がぼやけるという感じで、アナログアンプを重ねたときの悪い例のような音でした。
HA-300を購入してさらに環境を良くしようと思ったら本格的なネットワークプレーヤーを買うのがいいのでしょうね。

次ページからデザインと外観を見ていきます。

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