amahikasです。
久しぶりに店頭試聴をしてきたので、備忘録代わりに感想を書きたいと思います。
今回聴いてきたのはVictor HA-FW10000とFAudioのMajorです。どちらも先日のヘッドホン祭で評判が良かった製品です。
イヤホン選びは2018年で一旦終了と自分に言い聞かせていますが、この2製品は気に入ったとしても高価なので買うことはないだろうと安心して聴いてみました。
試聴環境
試聴結果の前に、試聴環境を書いておきます。
今回はメインで使っているDAP(デジタルオーディオプレーヤー)のひとつであるOPUS #3を使いました。OPUS #3の3.5mm端子に接続しています。
OPUS #3の設定はHigh Gainで、イコライザ類は無効にしてあります。
試聴に使う音源はいつもと同じ曲です。
主にCDから取り込んだAppleロスレス(ALAC)で、試聴に使う曲や聴きどころについてはこちらを参考にしてくださいませ。
Victor HA-FW10000
まずはVictorのHA-FW10000の感想からです。
HA-FW10000を簡単に紹介しておくと、FX850やFX1100、FW01を始めとするウッドシリーズの10周年記念モデルとして発売されました。ウッドシリーズはこれまでJVCブランドですが、FW10000はJVCブランドとなっています。
構成としてはダイナミックドライバをひとつ搭載しています。
新開発ウッドドームドライバーユニット、ハウジングからMMCX端子を分離した構造が特徴となっています。
JVCのウッドシリーズはこれまでも当ブログで何度か取り上げていますが、音質的にはよりすっきりとしたFX750やFW02が好きという傾向にあります。しかし耳掛け型ではないため、装着感が私には合わないことが多いです。本体が大きいのもマイナスポイントです。
FW10000はありがたいことに耳掛けが可能になっています。
価格は17.3万円です。
JVC(Victor)にしてはなかなか思い切った価格と思いますが、10周年記念モデルなので、たまにはいいのかなと思います。
詳細は公式サイトを参考にしてください。
Rangers / A Fine Frenzy
最初に感じたのは、高域が自然で量もよく出ていることです。
中域と低域も量感は十分ですが、低域はさほど下まで深い低音が出てない印象です。
解像力とウォームさのバランスがとても良く、分析的に聴くこともできますし、リスニング向けにもいいと思いました。
At The End Of The Day / Les Miserables
冒頭のパーカッションと歓声は非常にいいです。音の粒が細かくて滑らか、きらびやかさと深さもあります。音の伸び方が自然なのと余韻もちょうど良い感じに残ります。
音場の表現力も高くて会場が一気に広がりました。
スピード感と迫力も伝わりますし、ひとつひとつの楽器もそこそこ聞き分けられます。情報量の多さにも負けてませんね。
Flesh and The Power It Holds / Death
冒頭のヒステリックなギターとツーバスのアタック音が快適です。よく表現できてますね。
この曲もスピード感と迫力、暴力的な表現がうまいと感じます。
ただ、低域はもう少ししたまで出て欲しいです。
Bisso Baba / Bob James
低域を確認するために聴きました。やはりもう少し下まで低音は欲しいと感じました。
しかし前の曲から一転して落ち着いた雰囲気もうまく表現しますね。この辺はポテンシャルの高さと万能性を感じます。
Rio Rush / Fourplay
シンバル音を確認するために聴きました。
高域が粗くなることなく、細かく滑らかに鳴ってます。ベース音に包まれる雰囲気もよく出ています。
Master of Puppets / Metallica
この曲も迫力とスピード感がちゃんと表現できてます。
音源のよろしくない部分も素直に鳴らすと感じました。
Near The End / Mat Zo
最後にもう一度、低域を確認するためにこの曲を選びました。
やはり低音が少し物足りないですね。量は十分ですが、もう少し下まで出て欲しいです。
HA-FW10000のまとめ
正直に言ってFX850や1100の面影はないと感じました。強いて言うならFX750、そして最近のFWシリーズに近いんですが、それでも別物というくらい良くなっていますね。(私の好みに近づいてる)
個人的な好みで言うとまだ中域の量が少し多いと感じましたが、高域の量が明らかに増えているのが好印象です。この程度の高域の量を出すイヤホンは他にもあるんですが、特筆すべきは質です。非常に自然な高域でした。解像力は私が所有しているAKGのN5005のほうが高いと思いますが、ナチュラルさではFW10000のほうが上です。滑らかで開放的ないい高音ですね。
N5005のレビューで「高域が少し人工的」と表現しましたが、この弱点がほぼ解消されていると感じました。
音の点で唯一残念だったのは、低域です。量感は十分ですが、下まで出ていると感じませんでした。イヤーピースは試聴機についていた標準のSpiral Dotを使ったので、いつも使っているSpinFitに換えれば変わるかもしれませんが、いつも聴いている試聴曲で明らかに下まで深い低音が出ていないと感じました。
解像力についてはピカイチというわけではありませんが、必要十分で同じ価格帯の製品と比べても遜色はないと思います。
音場ですが、FX1100あたりだとどんな音源でも音場を無理やり広げるように聞こえてしまって、個人的には好みから外れるのですが、FW10000はもっと音源に対して素直で音源なりの音場を表現するという印象です。
遮音性は店内の音が少し聞こえる程度でした。音漏についてはわかりません。
音量は95から102で聴きました。鳴らしやすいとは言えないですね。スマートフォン単体だと厳しいかなと思います。
FAudio Major
続いてFAudioのMajorです。
こちらも大変評判のいい製品ですね。14万円前後で販売されていますが、FW10000と同様によく売れているように見えます。
FAudioは当ブログでも初めて取り上げるメーカーで、2014年設立の香港のカスタムIEMメーカーです。コンサルやリモールド、リシェルといったサービスから始めて、2016年に自社ブランドのカスタムIEMをリリースしています。
今回紹介をするMajorは2018年10月に国内発売されたばかりの製品です。10.5mmのダイナミック型ドライバーを搭載していて2Pinコネクタを採用しています。軍需用のクリスタル銅ケーブル(高純度銅ケーブル)が付属しているんですが、このケーブルがなかなか良さそうです。
独自開発のイヤーピースも興味深くて、「FA Vocal」と「FA Instrument」というイヤーピースが付属するそうです。最近は好みに合わせてノズルを換える、スイッチを切り替えると言った製品が増えてきましたが、イヤーピースで音を好みに変えるというのは初めてでしょうかね。
詳細は公式サイトを参考にしてください。
FAudio Major 音の感想
すでに2回試聴をしています。1回目は店頭試聴で、2回目は友人のMajorを聴きました。1回目も2回目もOPUS #3の3.5mmアンバランス端子に接続して聴いています。
1回目の試聴は『At The End Of The Day / Les Miserables』と『Bisso Baba / Bob James』を聴きました。OPUS #3の音量は84です。
まず、低域の量感が他を圧倒していて、高域が物足りないと感じました。私の感覚だと低音に寄り過ぎていて好みに合いませんでした。
2回目の試聴はバーンイン(エージング)もそこそこ済ませてある友人のMajorをゆっくりと聴くことができました。今回はイヤーピースをいくつか試してみました。結果的にortofonのMサイズが装着感、音ともにもっともよく合いました。SpinFit系は低域の量が多すぎますね。ケーブルは同じで標準ケーブルです。
1回目に比べると高域も目立つようになって、低域の量感が減りました。全体的にあっさり、すっきりとした聴感になったので好みに近くなりました。
音質のほうはFW10000とよく似てるという印象を受けました。全体的にウォームな傾向でリスニングに適したチューニングですが、解像力も高く、分析的な聴き方もできると感じます。私は逆のパターン(リスニングにも適したモニター機)が好きなんですが、FW10000とMajorは「モニターとしても使えるリスニング機」という印象を受けました。そしてどちらも高いレベルにあって私の好みにも近いです。
FAudio Majorのまとめ
店頭の試聴機と友人のMajorの間でバーンイン(エージング)時間にどれくらいの差があるのかはわかりません。今回の結果から感じたのはイヤーピースを選ぶ製品だなということです。
10万円を超える製品ですし、音もかなり良いのでしっかりと耳に合うイヤーピースでの試聴をお薦めします。
音のほうは上から下まで過不足鳴らします。全体的なバランスは中域と低域の量が多めです。高域の量はもう少しあってもいいと思いますが、足りないとは感じなかったので一般的には問題ないと思います。(私は「高音好き」もしくは「高音が聞き取れなくなってる」)
私がメインで使っているN5005との比較だと高域の量や開放感はN5005のほうが上です。個人的にもN5005が好みですが、Majorの高音には不自然さがありません。
中域はMajorのほうが量感があって、全体的にウォームな音を演出しています。中域、低域ともにキレもありますが、やはり包み込むような優しい音という印象のほうが強いです。
装着感はortofonのイヤーピースが一番良かったんですが、SpinFitも良かったです。オーソドックスな形状をしているので、イヤーピースさえ合えば装着感に困ることはないと思います。遮音性と音漏れについては試す機会がなかったので、また別の機会にしたいと思います。
まとめ
17.3万円のFW10000と14万円前後のMajorについて感想を書きました。どちらも5〜10万の価格帯だったら購入の候補に入れていますね。(笑)
FW10000はN5005ほどではありませんが、これまでのウッドシリーズに比べると全体的にすっきりとした聴感が気に入りました。それとなんと言っても高域の量と質も非常に好みでした。細かさ、滑らかさ、FW10000の高域はここ数年で聴いたイヤホン(IEM)の中でもトップクラスに好きです。残念だったのは低域です。N5005だけでなくRK01よりも下まで重低音が出ていないと感じました。イヤーピースを換えれば改善される可能性も感じたので、またの機会に聴いてみたいと思います。
Majorは1回目の試聴での印象が悪かったのですが、2回目は非常に良かったです。FW10000に比べるとよりウォームな傾向にあると感じましたが、厳密に聞き比べてないのではっきりとしたことは言えません。記憶しているかぎりだとMajorのほうが低域は下までしっかりと出ていました。高域はFW10000ほどの量と質ではありませんでしたが、十分な量と質です。
ここまで来ると確実に好みによって選択肢が分かれる世界だなと感じました。私自身はN5005が好みですが、低域が下まで出れば、FW10000はN5005と使い分けるのにちょうど良いと感じました。Majorは1回目の試聴の印象が悪すぎたので評価しづらいのですが、高域がもう少し欲しいところですかね。低域についてはFW10000よりも好きです。Majorもまた別の機会に聴いてみたいと思います。
価格も価格なので、今の環境を維持しながら値が下がるのを待つか、中古を狙ってもいいですね。今回は以上です。
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