じっくりと試聴 開放型ヘッドホン Grado PS500e

ヘッドホン

ラグビーワールドカップが終わってしばらくぼーっとしてた、amahikasです。
いつまでもロスロス言ってもいられないのでブログの更新を続けましょう。
今回は念願といってもいいと思います。友人からGradoのPS500eを貸してもらいました\(^O^)/
Twitterでは度々「Grado良いよねぇ」なんてことを言ったりしてるんですが、いまだ購入はしてません。理由は単純で開放型ヘッドホンの使用頻度が極端に少ないからです。DT 1990 PROという私の使い方にはピッタリの開放型ヘッドホンを所有しているのも大きな理由です。FOCALのELEAR、STAXなど欲しいなぁと思う開放型ヘッドホンは多いのですが、使用頻度を考えると二の足を踏んでしまっているのが現状です。

とは言え、Gradoのヘッドホンは一度はちゃんとレビューしたいと思っておりました。今回は良い機会を与えてもらいました。

Grado PS500e

PS500eの説明に入る前にGrado社を簡単に紹介しておきましょう。
ジョセフ・グラド氏によって1953年にグラド・ラボが設立されます。当初はMC型カートリッジの製造がメインでした。1990年に初めてのヘッドホン「HP1」を発売します。その後、1996年にRS1、2006年にGS1000シリーズ、2009年にPS1000シリーズを発売しヘッドホン界での地位を不動のものとします。
Gradoは大きく分けると4種類のシリーズがあります。SR325に代表されるプレステージシリーズは入門的な意味合いがあります。GSの型番がつくステートメントシリーズはリスニング用と、PSの型番がつくプロフェッショナルシリーズはモニター用途、RSの型番がつくリファレンススシリーズはGradoのリファレンスとなっています。
この他にもGHの型番の限定商品、最近発売されたGWという型番のワイヤレスシリーズがあります。

Gradoのヘッドホンはマホガニー材を使っているのが特徴でメープルやパイン材を使うこともあります。SRとPSシリーズはウッド以外の素材を使っています。
長きにわたってニューヨークのブルックリン地区で手作業による製品の組立をしているのも特徴のひとつですね。

今回紹介するPS500eはモニター用途のプロフェッショナルシリーズのエントリーモデルとなります。PSシリーズは他にPS1000e、PS2000eがあり、エントリーモデルとは言ってもPS500eは7万円弱で販売されています。
44mm口径のダイヤフラムを搭載していてハウジングはマホガニー材、外部ハウジングはアルミ合金のハイブリッド型となっています。ケーブルは8芯の無酸素銅線で着脱は不可です。ケーブル長は1.8mでプラグは3.5mmです。3.5mmから6.3mmの変換アダプタも付属します。

試聴環境

試聴にはメインで使っているDAP(デジタルオーディオプレーヤー)のiBasso DX220(AMP1 MKII)、Cayin i5、OPUS #3を使いました。どちらも3.5mmアンバランス端子に接続しています。各DAPの再生アプリはNeutron Music Playerです。DX220とOPUS #3の設定はHigh Gain、Cayin i5はLow Gainです。イコライザ類はすべて無効にしてあります。

試聴に使う音源はいつもと同じ曲です。
主にCDから取り込んだAppleロスレス(ALAC)で、試聴に使う曲や聴きどころについてはこちらを参考にしてくださいませ。

オーディオの試聴によく使う曲と聴きどころ(2017年2月版)
amahikasです。 昨年のうちに更新しておきたかったのですが、インフルエンザにかかってしまって更新ができませんでした。 今回は私がオーディオの試聴に使う曲をと聴きどころを紹介します。 ちなみに前回の更新は2015年10月でした。 ...

試聴結果

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Bisso Baba / Bob James

冒頭部分では中域の量がやや不足すると感じますが、その後は違和感はないです。シンバル音がクリアで響き方が良いのに対して、ベースの音に温かみがあります。シンバル類は外部ハウジングのアルミ合金がいい影響を及ぼしていてベース音はマホガニー材の影響で深みと温もりがあります。
全体的に音の抜けが非常に良いです。高域だけでなく全域にわたって開放感があります。

Rio Rush / Fourplay

この曲を聞くと全体的なバランスは高域寄りと感じます。下のほうでベース音に包み込まれるような感覚が薄いです。そのかわり、シンバルとスネア、ボーカル、ピアノはよく目立ちます。
全体的にドライな傾向にあって曲の雰囲気でいうと重厚さよりも軽快さのほうが強調されます。

Flesh and The Power It Holds / Death

歪んだギターの音が素晴らしい鳴り方をします。これがGradoのヘッドホンに魅力を感じた点なので当たり前なんですが、カラッとしたドライな音ながらも聞きづらくならないバランスは秀逸だなと思います。
この曲も全体的なバランスは高域寄りです。もう少し低域と低い中域(Low Mid)が出ると個人的にはドンピシャの好みと感じます。
しかしディストーションの表現力は本当に高いですね。ギターの音を聴くにはGradoが最適と思っていましたが、じっくりと聴いてもこの感想にかわりはありません。

Master of Puppets / Metallica

ギターの歪みとスピード感はよく表現されていますが、この曲はもう少し低い中域(Low Mid)を鳴らして欲しいですね。試しに同じメタリカの”(Anesthesia) Pulling Teath”を聞いてみましたが、こちらももう少しLow Mid以下に量感があるといいと感じました。

At The End Of The Day / Les Miserables

ちょっと意外ですがこの曲のほうがバランスが良いですね。細かさもありますし、各楽器の分離も良いです。解像力が高いのとスピード感に優れてます。低い弦楽器の音もちゃんと出てますね。オーケストラもよく合うと感じました。

Crush / Kelly Sweet

なんの問題もないですね。必要以上にボーカルが前に出てくることもないですし、各楽器が良く分離されています。音のつながりも良くて全体的にナチュラルな聴感になってるのも好感です。

Rock the Blues Away / AC/DC

最高ですね。Gradoはこの手の音楽をうまく聴かせるために作られたと思うくらい気持ちがいいです。ギターリフの歪み具合、スピード感と申し分ないです。

The Brain Dance / Animal as Leaders

この手の曲も意外と聴けるのは新たな発見です。音源に合わせて音場も広がるのは良いですね。先ほどのAC/DCだともっと中域に集中した鳴らし方をしますが、この曲では奥行きが増します。

Doom Mania / Electric Wizard

最近よく聴いてるドゥームメタルバンドです。地を這うような低域が印象的なドゥームメタルですが、こういう曲もしっかりと鳴らしますね。スラッシュメタルやデスメタルと比べてもディストーション効果が強いので、Gradoにはよく合うように思います。低域の倍音なんかも非常によく鳴らしてくれますね。

デザインと外観

写真で見ていきましょう。

PS500e本体

PS500e本体

イヤーカップ

イヤーカップ

アルミ合金のイヤーカップにメーカーと製品名が掘られています。真ん中のグリルは焼き肉屋で使う鉄網のようですね。beyerdynamicsの質実剛健なデザインも好きですが、Gradoのこのデザインも好きです。品質を高めながら不要なものはそぎ落としてるんですが、デザインに一貫性があって違和感がありません。

プラグ

プラグ

プラグも太くて無骨です。ただ、手で触れる部分にギザギザがあるので抜き差しはしやすいです。考えてないようで実用性も考えられてるなと感じます。

ケーブル

ケーブル

ケーブルです。1.8mなので室内でも室外でも困らないと思います。しかし、太い。そして重たい(笑)

アーム部分

アーム部分

アーム部分は長さの調節が可能になっています。品質と使い勝手は問題ありませんが、若干実験器具のように見えます(笑)

ケーブル接続部

ケーブル接続部

ケーブルは着脱ができません。すごく大ざっぱに着けてあって素敵です(笑)
室内で使うことがほとんどでしょうからこれくらいでも問題ないですね。

ヘッドバンド

ヘッドバンド

ヘッドバンド部分です。皮の部分が薄い上に鉄板でも入ってるのかというくらいに硬いです。私は問題ありませんでしたが頭頂部が痛くなる方がいても不思議はありません。

デザインと質感は気に入っていますが、品質については本体とケーブルの接続部など気になる点もあります。しかし外で使うわけではないですし、よっぽど乱暴に扱わなければ問題のないレベルにあります。最近のヘッドホンやイヤホン(IEM)はデザインや質感が良い製品が増えているので気になる方もいらっしゃると思いますが、私は音のほうを重視しているので最低限の品質が保たれていれば問題ありません。

音漏れと遮音性

不思議なもので遮音性はそこそこ確保されています。自宅で聴いていても周囲の音はあまり入ってきません。ただし、音漏れはすごいです(笑)
DT 1990 PRO以上の音漏れでおそらく私が所有したりレビューをした開放型ヘッドホンでは最悪の部類に入ります。スピーカーではないのでご近所様に迷惑をかけることはありませんが、同居住民には間違いなく音が聞こえるレベルです。

装着感

お世辞にも装着感が良いとは言えませんが、室内で使う分には極端に悪いとも感じませんでした。耳を覆ってしっかりとフィットさせるというよりも耳に乗せるという感覚がありますね。それとイヤーパッドがスポンジ素材なので好き嫌いは分かれるかなと思います。
個人的にはこの音が出るなら問題のない範囲でした。耳が疲れることもありませんし、本体が重すぎるということもありません。
使い慣れている合皮やベロア素材のほうが装着感は快適になると思いますが、音が変わりそうなのでGradoはこれでいいのかもしれませんね。Gradoの音にはそう思わせる独自性があるように思います。

音量

音量ですが、DX220では98から106の間で聴きました。OPUS #3は110前後です。DT 1990 PROよりは鳴らしやすいです。

DAPの比較

DAP(デジタルオーディオプレーヤー)はCayin i5、Cayin N6ii/T01OPUS #3DX220+AMP9DX220+AMP1 MKIIといろんな組合せで聴いてみました。どれも良かったのですが、一番好みだったのはCayin N6ii/T01です。高域はi5とよく似てますが、中域と低域に量感があってメタルやハードロック系の曲によく合いました。ちなみに音源の悪さもそのまま出ました。
OPUS #3はアコースティックな曲の表現力の高さに驚きました。繊細な音を出すには相性が非常に良かったです。低域はもう少し量感があるといいなと思いうこともありますが、高域の主張の強さと開放的な音の魅力が強すぎてあまり気になりませんでした。全体的に音の抜けが良いのも好印象です。メタル系は少し迫力が不足します。
DX220+AMP9、DX220+AMP1 MKIIも中域と低域に量感があってN6ii/T01と比べても迫力は十分でしたが、全体的にマイルドな聞き心地になりました。人によってはこちらのほうが好みだと思いますが、私はGradoにマイルドさは求めていなくて尖っていて暴れん坊なところに魅力を感じています。ちなみにAMP1 MKIIよりもAMP9のほうがエレキギターのリフが心地良くて荒々しさの表現は高いです。
Cayin i5も悪くはないんですが、N6ii/T01と比べると中域の量感が物足りなく感じました。DT 1770 PROとの組合せだとi5のほうが好みだったりすることもあるんですが、PS500eの場合はN6ii/T01のほうが好みでした。PS500eに限らず、Gradoにはメタルとハードロック系をいかに気持ちよく聴かせてくれることに期待しているので中域と低域はある程度の量感があったほうがいいと感じます。

まとめ

ようやくGradoのヘッドホンのレビューを書くことができて大変光栄且つ嬉しく思います。
じっくりとPS500e聴いてみた印象ですが、想像通りだった点と意外だった点がありました。まず、想像通りだったのはエレキギターのリフがとても気持ち良く鳴るところです。特にZZ Top、Motorhead、初期AC/DCのように少し乾いた音のギターリフは絶品でした。ノイズや歪み、付帯音をカットしてしまうのではなく、うまく表現することによって生々しさが増すと感じます。スタジオでアンプから出た音をそのまま聴いてる感覚に近いです。特に歪んだ音の鳴らし方がうまいです。スピード感とキレも高いレベルにあるので速いリフももっさりとすることなく歯切れが良いのもポイントが高いです。ちなみにDX220+AMP1 MKIIだとノイズや歪み、付帯音がカットされてると感じることがありました。
意外だったのはアコースティックな楽器の表現力も高いところです。カントリーミュージックでは弦楽器の歯切れが非常に良いですし、アコギの繊細な響きもうまく表現できてました。ノイジーな音源が合うという先入観があったのですが見事に覆されました。アコースティック楽器の繊細で美しい旋律を鳴らすのもうまいですね。私がよく聴くアーティストだとFleetwood Mac、Dixie ChicksAlison Kraussあたりが非常に良かったです。
オーケストラをうまく鳴らすのにも驚きました。基本的に余裕のある鳴らし方をするせいか、音の密度が上がっても問題ありませんでした。また、広い音場の表現力も高かったです。
逆に合わないと感じたのはフュージョン系と電子音が中心のトランス系です。もちろん、聞きたくないと言うほど悪いわけではないのですが、ざわざわGradoで聴く必要もなかろうと思います(笑)

同じ開放型ヘッドホンのDT 1990 PROと比べると1970年代のハードロック、ヘヴィーメタルはPS500eのほうが好みです。1990はいろんなジャンルを正確に鳴らす万能タイプで、PS500eは得手不得手がはっきりとしてます。1990は粗い音源もそのまま鳴らすタイプですが、PS500eと聞き比べると整った音を出すと感じます。

同じGradoでもGSとRSシリーズは音の傾向が違うと思うので、一度ちゃんと聴いてみたいですね。特にGSシリーズは限定販売だったGH1とGH2が好みでした。RS1eは店頭で試聴をしたことがありますが、好印象でした。時間が取れるようになったら代理店様にお願いをして貸してもらおうかなと思っています。

今回は以上です。

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