予定していたよりも長引いているイヤホン選びの続きです。
なかなか「これは!」と感じる製品がないのでしばらくPinnacle P1を使っていればいいかなという気になっていたのですが、ようやく好みに合う製品と出会うことができました。
今回感想を書くのはAKGのN5005です。
N5005は2月に行われた「ポタ研 2018冬」で聴きたかったんですが、試聴機がひとつしかなくて長蛇の列だったため、試聴を断念しました。その後、良いというレビューもあまり見かけなかったので興味が徐々に薄れていったのですが、3月30日に発売をされてから購入者の感想をよく見かけるようになりました。肯定的な感想がとても多かったので、再び気になり始めたので店頭で試聴をした次第です。
店頭試聴は3回ほどしてきました。個体によって違う音が出ることもあるため、2店舗で試聴をしました。
AKG N5005
過去にK518 LEを使っていたこともあってAKGはとても印象のいいメーカーです。
店頭で試聴をしたK712 Proの音が良くて開放型ヘッドホンに憧れる結果となりましたし、友人に聴かせてもらったK3003も好印象でした。
しかし最近試聴をしたAKGの製品でいうとN30、N25はいまひとつ好みに合いませんでした。私がAKGの製品に対して魅力を感じている、柔らかくてアコースティックな音は健在なんですが、いまひとつ攻めておらず無難すぎる音に仕上がってるなと感じたのが正直なところです。
今回試聴をしたN5005は、K3003の後継機なのかなと思っていたんですが、N40の上位機種ととらえたほうがいいようです。
AKGがSamsungグループに買収されたことに伴ってK3003を設計開発したオーストラリアの拠点は廃止されてるんですね。N5005は新しい拠点で設計開発されていますし、オーストラリアで設計開発をした技術者もN5005には携わっていないようです。
K3003とN5005ではドライバー構成も異なることから、個人的にはK3003の後継ではなく、N40の上位機種と考えるようにしています。
N5005は中高音域用のバランスド・アーマチュア・ドライバー4基と低音域用のダイナミック・ドライバー1基の合計5基を搭載しています。
4種類のメカニカル・チューニング・フィルターで音質をカスタマイズすることができます。この辺はN40と同じですね。
着脱式ケーブルはMMCXを採用していますが、すでに購入した方のレビューを読むかぎり穴が深いため、接続可能なケーブルは限られるようです。この辺は注意が必要ですね。
N5005には3.5mmのリモコン付きケーブルと2.5mmのバランスケーブル、Bluetoothケーブルが標準でついてきます。日本モデルにはさらにAKG純正アップグレードリケーブル「CN120-3.5」が付属しますので豪華なパッケージになっています。
N5005の価格ですが、約97,000円となっています。K3003が14万を超えてることを考えると良心的な価格設定かなと思います。まあ、安いとは言えませんけどね(笑)
N5005の詳細については公式サイトを参考にしてください。
試聴環境
試聴にはメインで使っているDAP(デジタルオーディオプレーヤー)のCayin i5 DAPとOPUS #3と直接接続した感想を書いていこうと思います。
Cayin i5はローゲインでOPUS #3はハイゲインです。両方ともイコライザ類は無効にしてあります。N5005のケーブルは標準のものです。イヤーピースはSpinfitをつけて聴きました。
音源は主にCDから取り込んだAppleロスレス(ALAC)です。
試聴に使う曲や聴きどころについてはこちらを参考にしてくださいませ。
念のため書いておきますが、i5の感想は直前までP1を聴いてました。OPUS #3の感想は直前までMEZEの99Classicsを聴いてました。
試聴結果
Bisso Baba / Bob James
まずは、i5との組合せの感想です。
一聴して低域がよく出ていると感じました。低いところまで出ているのと量感も十分です。
解像力は全域にわたって高いのですが、変に尖った音になってはおらず、ナチュラルなサウンドも両立していると感じます。
傾向としては同社のN40で感じた傾向と似ていますが、高域は天井が高く感じますし、低域も下までよく出ています。もやっとした感覚がなく、全体的に見通しが良いです。
ベースとシンバルは高いレベルで聴かせてくれますが、ピアノはやや控えめかなと感じます。この曲ならもう少し前に出てきてもいいですね。
続いてOPUS #3で聴いた感想です。
i5に比べると高域寄りになります。しかし、ベース音もしっかりと迫力は出てますし、下まで出てると感じます。
シンバル音は繊細で良いですね。それとピアノの音も良質でi5よりも前に出てきてます。
全体的にすっきりと解像力高く聞かせるが、温もりもあって聴きやすいのが好印象です。
Flesh and The Power It Holds / Death
i5では少し音量を上げてみました。
音の密度が上がっても破綻せずに解像力と迫力をともに表現してるのはすごいですね。
冒頭のヒステリックなギターも良いです。
OPUS #3ではスピード感がよく出ていると感じました。この曲の迫力も表現できてますし、各楽器の分離もいいです。
特にドラムのアタック音が細かく聞き分けられました。
高域と低域に比べると中域は大人しめなんですが、この手の曲で迫力が出ているということは中域もしっかりと出ているということなんだと思います。
At The End Of The Day / Les Miserables
i5で聴いた感想です。
冒頭の歓声とパーカッションは滑らか且つ音の粒が細かいです。高域が粗くなったり、軽く聞こえるということもありません。
低域はさほど主張するわけではないんですが、下までよく出ていて量感も必要十分です。
全体的に解像力が高いのと音の粒が滑らかで、各帯域の音のつながりもいいと感じました。
OPUS #3でもほぼ同じような感想です。
ただし、OPUS #3のほうが女性コーラスの分離がよく、迫力とスピード感がよく表現されているように感じました。特に低い弦楽器の音が良かったです。
基本的にオーケストラはものすごく得意だと感じました。
Master of Puppets / Metallica
この曲はi5とOPUS #3で聴いた印象はほとんど変わりませんでした。
適度に音が分解されていながらも迫力やスピード感は表現できてますし、印象的なシンバル音の残響も良い感じに表現されています。
しかし、中域から低域にかけてやや量感が物足りないと感じました。この曲に関してはP1のほうが得意と感じました。
多くのイヤホンを試聴してこの曲がいまひとつと感じることが多いです。P1のほうが個人的には好みですが、N5005も高いレベルで鳴らしてくれました。
Rio Rush / Fourplay
この曲もシンバル音が粗くなったり軽く聞こえるという点で、鳴らすのが難しい曲となっています。
N5005で聴いたかぎり、シンバルはまったく問題ありませんでした。ごまかした感じもなく、繊細且つ細やか、滑らかに出るべき音がちゃんと整えられて出ています。
この曲のゆったりまったりとした雰囲気もよく出ていますし、解像力が高いのも両立していますね。
OPUS #3で聴いたときには低域の出し方が音源に素直という点です。前述のBisso Babaだと量感たっぷりなんですが、こちらは量感は控えめです。無理に低い音を出さないし量も増やさないという印象ですね。
Rangers / A Fine Frenzy
i5で聴いた感想です。
低域が低いところまでよく出ています。量感はそこそこでキレのほうが目立ちます。タイトなベース音という印象が強いんですが、包み込むような表現もできてるなと感じます。
シンバル音は歯切れ良くて非常に心地いいです。
全体的には解像力が高くて開放的と感じます。バランスでいうとやや高域寄りでしょうかね。
ボーカルの刺さりは最低限に抑えられていて好感です。この曲はもともと多少は刺さるはずなのでこれくらいならOKという範囲でした。
OPUS #3で聴いても高域も低域も過不足なく出ていると感じました。シンバル音はi5よりも繊細さが目立ちます。i5よりも高域寄りの傾向が強くなり、高域の伸びが良くなります。天井が思いっきり高くなったという印象です。
Come Sail Away / STYX
i5で古めの音源を聴いてみました。
ピアノの音が繊細です。やや音が細すぎるかなくらいに繊細ですね。ボーカルも前に出てくるタイプではなく正確な位置で鳴らすタイプと感じます。
古い音源でもそれなりに聴かせると感じますが、サビの部分ではシンバルとスネアが少し粗くなりました。音源もあまり良くないので音源に素直な鳴らし方をするタイプですね。
次ページに続きます。
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